22. もうすぐ春ですね

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22. もうすぐ春ですね

 『曽我(そが) 隼人(はやと)』という、メガネ君にはとても言えない不純な動機で入部したけど、最近この部活が面白くなっていた。  植物って成果が目に見えるし、手間かけたら応えるし、なにより癒される。  あれ……? おれジジイ化進んでる?  でも冗談抜きに、花や野菜が育つことは季節の流れを感じられて、曽我先生と過ごす時間の変化を教えてくれる気がした。  先生の万年筆で答案用紙に自分の名前を書いたあの日と、理科準備室で少しずつ一緒に過ごす時を積み重ねてきた今とで、先生と俺との距離は少しは変わったんじゃないかって。  少しは近くなったんじゃないかって、……思っちゃダメ?  3年生はもう卒業したから4人で春の花を植える。  来年度はガチで新入生勧誘とかしてみようかな。部員増えたら先生面倒くさがるかな。  朝はまだ寒いこともあるけど、日中は日を追うごとに温かくなり始めたこの頃。  もうすぐ春がおとずれようとしていた――。  
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