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息を切らして中を覗いたけど、そこには誰もいなかった。
(先生、学校変わるなんて一言も言わなかったじゃん!)
(受験近づいたら進路の相談乗ってくれんじゃないの?)
(ポテサラは? まだ上手くできたヤツ食べてもらってないよ)
言いたいこと、聞きたいことが溢れてくるなか、瞬間よぎった怖い考え。
――え、待って。
俺が昼休み先生んとこ押し掛けてたのが原因じゃないよね。
前に学年主任が何か言いに来てたのに、その後も俺が甘えて会いに来てたのが結局問題になって、それが先生ここにいられなくした理由とかじゃないよね。
いろんなことが頭をぐるぐるまわる。
乱れる呼吸は走ったせいだけじゃなくて、吐く息もそれを漏らす唇も震えていた。
俺は準備室と並ぶ理科室に入り、入口すぐ近くの席で両腕で顔を覆うようにして机に突っ伏した。
思えば学校変わることなんて、教師は生徒に前もって言わないよな……。
先生はいつから分かってたんだろ。来月にはもう自分はここにいないって。
知らずにバカみたいに学年上がってもここに来るの楽しみにしてる俺をどう思って見てたんだろ。
今まで見せたことのない表情を俺にするようになったの、いつからだった?
先生……。
嫌だよ……。
先生いなくなるなんて、ムリだよ俺――。
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