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24. 僕の先生
扉を開け中に入って行く曽我先生の後を追うように、俺も準備室に入る。
そこで改めて気づいたことに、ハッとした。
応接セットのテーブルとは別の、先生が時々資料を広げたり書類作ったりしてた机が綺麗に片付いている。
……そういえば先生、最近ここ整理してなかったっけ。
そのことを思い出し、さっきまで溢れるように湧いていた聞きたいことが喉の奥で詰まる。
“ウソだって言って” って言葉が言えなくなる。
――唇の震えが止まらない。
「こら。大掃除はどうした」
珍しく整えていた髪が逆にうっとうしいのか、先生は前髪をくしゃっと崩しながらいつもの一脚に腰を下ろし俺を叱った。
鈍い足取りで部屋の奥まで進むと、それと向き合うもう一脚、俺の一番の特等席には座らず先生の側に立ちつくす。
「……なんで」
絞り出した声がかすれて、すごく情けない。
「……なんで変わっちゃうの」
唇の震えがそのまま声にも伝わってしまう。でもどうすることもできない。
両方の掌をギュッと握りしめ言葉を漏らす俺を、先生は少し困ったような顔で見上げた。
「俺のせい? 俺みたいのが先生んとこいつもいたせい?」
さっきよぎった怖い考えがどうしても浮かんで、握った指先が冷たくなる。
それを聞いた先生は、フッと息を吐くと崩した髪をかきあげながら笑った。
「そんなわけないだろ。普通にただ定例異動するだけだ」
そう言ってるけど、もしかしてってどうしても思ってしまう。
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