ブレスド・ソウル

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旅人は、山一つ越えた先にある町へと向かっていた。その町は、様々な国から人が集まり、色んな情報が集うと聞いていた。旅人が欲している薬草の情報もあるかもしれないと思い、遠くから出向いていたのだ。 しかし、思いのほか町までの山道は険しかった。道はある程度は整備されているが、アップダウンが激しく、旅人の額からは汗が幾筋も流れていた。 木々の向こうに町の姿が見え始めた時、旅人は背後から視線を感じた。振り返ると、来た道のずっと遠くに若い女の姿があった。紅蓮のローブを身にまとい、フードの下の大きな瞳は、まっすぐに旅人の方に向いていた。 旅人は目を細めて、女を見る。何か自分に用があるのだろうか。それにしては近づいてこないのもおかしい話だ。こんな山の中で手ぶらなのも気になる。もしかしたらこの辺りに住んでいるのか。 旅人はそんなことを考えていたが、瞬きしたその刹那、女の姿は突然に消えてしまった。旅人は、狐につままれたような体験に、思わず首を傾げた。
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