ブレスド・ソウル

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次の日の朝、小屋を出ると、湖のそばに女が横たわっていた。その心臓には、尻尾の針が突き刺さっていた。旅人は女の表情をのぞき込んだ。生気の全くないその顔は、苦痛に歪んでおり、どこか疲れ切ったような顔にも見えた。 女のすぐ横には、薬草の束と、赤い液体が入った瓶、そして手紙が置かれていた。旅人が手紙を開くと、そこにはびっしりと文字が書かれていた。 ***** 旅のお方へ ここに置いた薬草は、山で取れた最高級のもので、痛みにも効くだろう。瓶に入っているのは、私の血だ。呪われた血を飲めば、呪いの進行を一時的に抑えられる。きっと、あなたの呪いにも効くはずだ。 私は常に死のうと思っていた。死ななかったのは、ただ死ぬのが怖かっただけだ。人の血を吸って自分が生きていくことは、余りに重い罪の意識を背負うことであり、呪いを背負っていくことよりも、よほど苦しいことだった。呪いによって、魂が汚れたのではない。自分自身が、魂を汚していたのだ。 私に同情してくれたのは、あなたが初めてだ。人に気持ち悪がられ、避けられ、憎まれ続けた私にとっては、新鮮で、嬉しかった。初めて人として扱ってもらえたように思えた。 この呪いを解くことは、どんなに幸せなことだろうか。あなたから聞いた話は、今までに考えもしなかったことで、心がときめいた。しかし、私が殺した人間のことを考えると、それは許されないことだ。少しでも希望を持たせてくれて、嬉しかった。 きっと心優しくて、勇敢なあなたなら、呪われた魂にも勝つことができるだろう。私は死後の世界から、あなたが呪いから解放されることを祈っている。
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