ピアノ上手の星野さん

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 依頼をおさらいしよう。第二音楽室で時折、ラップ音のような、カチッとかパチッという音がするらしい。噂ではあるが、それが変な広まり方をして、幽霊がいるだの自殺した生徒がいるだのとなり、音楽室の使用が控えられると音楽系の部活に支障が出る。生徒会長としては噂の真相を、根も葉もないものだと大々的に打ち上げたいらしい。  今日は星野が居た手前長居できなかったが、ラップ音は観測できなかった。  ただ、少年の脳裏に何かが引っかかっていた。 「どうだった?」 「星野がいてピアノ弾いてた以外には特に不審なところはなかったぜ。…………あぁ、そういえば鍵盤の隙間にゴミみたいなのが付いてたな」 「ゴミ?」 「黄色い接着剤みたいなやつだった。拭いても取れそうになかったし、打鍵してた星野が問題なさそうだったから放置しといた」 「…………そう。噂の根源を突き止めて排除しておきたいわね」 「だな。にしても、不審なところはなかったが、何かが引っかかった。何が引っかかったのか、まるで分からなかったがな」 「君がそう感じたなら、何かがあるはずよ。引き続き調査を頼むわね」  少年にコーヒーを差し出すと、生徒会長は目を見ながら訴えてきた。少年の感覚器官はその課題に答えるだけの力がある。自らが推した少年の能力が、期待に答えられるはずだと、生徒会長は確信している。
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