二次試験トーナメント一回戦・ヴァンジャンス

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二次試験トーナメント一回戦・ヴァンジャンス

 ヒイロとヴァンジャンスが受験者が集まる場所に行くと3グループに分かれていた。試験管と思われる人が大きな声で指示している言葉を聞くと、どうやら近接武器や身体能力強化で戦う前衛職がグループ1、魔法や弓などの後衛職がグループ2、そして回復や支援系がメインのグループ3の3組に分かれるらしい。  3組目の支援系は人数も少なく希望をすれば二次試験はパスされるらしい。ノミルも言っていたが世界的に見ても、支援系や回復魔法が使える人は、どの種族を見ても少ないらしい。  とりあえずヒイロはグループ2、ヴァンジャンスがグループ1に登録した。グループ3にいた人の中には数名、グループ1や2に登録した人もいたようだ。  試合のルールや合格の条件を確認したヒイロとヴァンジャンスは、自分の番になるまでノミル達のところへ戻る。帰ってきた2人にミコルが声をかける。 「どうな感じだったの?」  ミコルの質問に少し落胆気味のヒイロが答える。 「前衛職と後衛職の2部門に分かれてのトーナメント形式でベスト8まで行けばとりあえず合格らしいから3回勝てばいいんだけど、一応決勝戦まであるみたい……てかさ、これじゃぁヴァンとは戦えないし!!」 「ふっ、どうせオレにこてんぱんに負けて悔しがるんだからやめておけ」 「こらこら、本番前から怪我するなよ」  すでに取っ組み合ってる2人を見て、ノミルが笑いながら仲裁する。仲裁されながら、ヒイロが取っ組みあった状態から思い出したように話をする。 「あ、あとなんか一昔前のものすごい技術?知識人族のロストアイテム?とか言うで、二つの舞台には即死ではない限り、数秒後に傷が治る装置みたいのがついてるんだって!」 「ほぉ、噂には聞いていたが、さすが世界最高峰の騎士学校だな。試合人数に対して、学校側の治療班が少ないと思っていたんだ」 「けど、それなら安心ね。流石にこの年齢なら死ぬほどの威力のある攻撃は難しいもんね」 「だといいが……ん~そうでもなさそうな奴らが近くにいるんだけどなぁ」   ノミルは少し心配しながら会場にいる他の受験者ではなく、ヒイロとヴァンジャンスを見ながら苦笑いをする。  そこに試合を始める試験官の声が鳴り響く。 「第一試合を開始します」 「あっ、始まった!それじゃあ行ってきまーす」 「俺はあっちか」  最初に試合になったのはヴァンジャンスだった。相手は熊人種の獣人族だった。ヴァンジャンスも12歳の知識人族にしては一回りぐらい大きかったが、元々の身体が大きい熊人種はそれをはるかに上回る体格にその長い腕をより大きい爪の武器を両手にはめていた。  2つある舞台の内、片方にヴァンジャンスが上がる。遠くでミコルの声援が聞こえている。ヴァンジャンスは、片手をあげ声援に応える。 「あぁなんだよ、劣等種か。こりゃ楽勝だな」  熊人種の獣人は、自分の身体をより大きく見せヴァンジャンスを見て笑っている。ヴァンジャンスは、大きな声で繰り返し挑発してくる相手の方を向き直すと軽くため息をつく。2人の間に立っている審判は2人の位置を確認した後、ヴァンジャンスに質問する。 「キミは何か武器は使わないのか?」 「あぁ」 「キミがそれでいいなら良いが……では、試合を開始します。お互い名前を名乗りなさい」 「ヴァンジャンスだ」 「ブラファー様だ」 「試合……開始!」  審判が後方に下がり、2人から距離を取る。その瞬間、ブラファーが両手で大きな鉤爪を振りかざし、ヴァンジャンスに襲いかかる。 「非力な劣等種め、くたばれぇー」  ブラファーの鉤爪がヴァンジャンスの頭に当たりそうになった時、ヴァンジャンスはまたため息をつきながら、ブラファーの鉤爪を難なく掴む。 「お前、少しうるさい……」 「なっ、受け止めただと!?だが、俺様に力試しとはいい度胸だ」  ブラファーが力を込め、鉤爪を無理矢理振り下ろそうとする。しかし、ヴァンジャンスは顔色一つ変えずブラファー鉤爪を押し返す。その事実にブラファーは、絶望する。 「う、ウソだ。オレは獣人族の中でも1、2を争う熊人種なんだぞ!?それを……れ、劣等種のくせにぃ……」 「お前、ヒイロよりバカだな……力の強さと種族の違いは関係ないだろ」  そう言うとヴァンジャンスは、ブラファーのガラ空きのボディーに強烈な前蹴りを繰り出す。直撃を喰らったブラファーはそのまま場外まで蹴り飛ばされ、あっさりと勝負がついた。  予想外の勝負結果に会場にいる見物客や他の受験者だけでなく、審判も一瞬時間が止まってしまったが、気を取り直し大声で結果を伝える。 「それまで!ヴァンジャンスの勝利!!」  その言葉を聞いて、ヴァンジャンスはさっさと舞台を降りる。そして、ヴァンジャンスの勝利にはしゃいでいるミコルに手を振りながらヒイロの姿を探す。ヒイロもまたヴァンジャンスが戦っていた舞台の隣にある舞台に今、上がるところだった。
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