エピソード02 〜再会〜

1/1

25人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

エピソード02 〜再会〜

 気がつくと目の前には懐かしい面々が揃っていた。数十年前に世界を救うために力を貸してくれた神獣……神達だ。 「久しぶりじゃのう……覚えておるか?このスーパープリチーの我のことを?」 「もちろんだよ、シヴァさん。久しぶり、他のみんなも変わってない……し、オレも若い頃の姿になってる?」  少し戸惑いを見せるヒイロに対して神獣達の後方にいるフェニックスことマリアモンテが話しかける。 「申し訳ありません、それは私が勝手な配慮をさせていただきました。嫌なら戻すこともできますが」 「いや、これで大丈夫です。みんなと一緒に戦った時の姿の方が今の意識にはぴったりですし、精神面も若返った気がします」 「そうですね、見た目はともかくヒイロさんの能力はあの頃のピークに戻してありますから」 「なるほど……何か訳ありな感じですね」  ヒイロはそう言いながら一番奥にいるシュタイに目線をずらす。 「それは後でのお楽しみ。今はみんなとの再会を楽しもうよ」  全能神シュタイの言葉に、妖精神カーバンクルと氷神シヴァがヒイロに抱きつき、他の神もヒイロとの再会を楽しむ。炎神イフリートをはじめ、竜神バハムート、海王神リヴァイアサン、武神オーディン、魔神ハーデス、大地神タイタン、人神アスラ、雷神ラムウ、そして転生神フェニックス、全て世界を救うために神獣に姿を変え、力を貸してくれた神達だ。 「それでは、最後に私たちよりも一番会いたかった方に会いに行きましょうか?」  マリアモンテの言葉にヒイロは、「はっ」と驚き、言葉を返す。 「もしかしてアイツもこの世界に来ているの?」 「えぇ、ヒイロさんよりもずっと前から」  マリアモンテが答え、さらにシヴァが続ける。 「そうだぞ!アイツは性格は悪いが、お前以上の努力家で、こっちの世界に来てから、今までずっと我らが修行の師匠をしておったのじゃ。今では、我らと変わらないほどの強さを持っておるぞ!きっとあの頃のお前以上じゃ」  シヴァが自分のことのように自慢げに話す。それから神達と別れたヒイロは、その人物のところへと向かう。  ヴァンジャンスは、いつものように修行をしていた。何故、死んだ身でありながら修行をしたのか、理由は簡単だった。アイツと肩を並べたかった、アイツより強く、アイツを守れるぐらいの強さが欲しかった。ただそれだけだった。  ヴァンジャンスはふと後ろに気配を感じ、振り向くと今にも泣きそうな懐かしい顔が目の前にいた。久しぶりの再会にヴァンジャンスの中にも込み上げるものがあったが、何故か目の前の人物に対しては素直に気持ちが言えなくなる。 「よぉヒイロ、久しぶりだな。相変わらず、マヌケな顔しやがって」  ヴァンジャンスは、そう言いながら久しぶりに自分の顔が笑顔になっていることに気付く。そして、目の前にいる人物、ヒイロはくしゃしくゃに泣きながら、同じような笑顔で言葉を返す。 「おぅ、ヴァンジャンス……本当に久しぶりだな……元気に……してたか?」 「相変わらずバカだな、死人に元気もクソもないだろ。それよりオレはもうお前に負けないくらい強くなったぞ!」 「へっ……シヴァさん達と修行してたらしいな。まぁ力が強くなったって、所詮は脳筋だからな」 「……殺す」  いつのまにか取っ組み合いになっている2人を見て、全能神シュタイは大笑いをし、転生神マリアモンテは少し怒りしながら、2人を止める。 「もう……貴方達は、もう少し力のある者としての自覚を持ってください。子どもですか!」  マリアモンテの言葉にお互いに相手が悪いと、言いたそうな顔で睨み合い、再び向き直る。まだ笑っているシュタイをマリアモンテが笑顔で睨み、シュタイが「こほん」と咳払いをし、あらためて話しをする。 「さてと……感動?の再会は、終わりにして2人にはとても大事な話があるんだ」  シュタイの言葉にヒイロとヴァンジャンスは、真剣な顔つきをする。 「なんで死んだはずの2人の魂が、本来の輪廻転生の渦から離れ、神達以外に住むことが出来ないこの世界 《ユグドラシル》に来れたか……それは2人にある使命をお願いしたいからです」 「だろうな。いくら俺たちが神に等しい魂を持っていたとしても、所詮神ではないからな」 「なぁシュタイさん、ヴァンジャンスは確かにアンラマンユとかと融合してそんなふうになったかもしれないけど、オレはみんなの力を借りてただけで、普通の魂じゃないの?」  ヒイロはヴァンジャンスを軽く指差しながら素直に質問する。そして、その問いに対し、シュタイではなく、マリアモンテが微笑みながら答える。 「そんなことはありませんよ。確かにはじめの頃は、ただ神獣として力を貸すだけでしたが、アンラ・マンユや神アフラ・マズダーとの戦いの際には、私たちの力をも一時的にですが、越える状態までなられていましたよ」  その答えにヒイロは、神アフラ・マズダーとの最後の戦いの場面を思い出して口ずさむ。 「……あの時の力はそうか……」 「まぁそういうことなので、またまた力を貸してください!というより、これからは私達の代わりにあらゆる世界を救ってあげてください!」 「えっ?」 「なに?」  ヒイロとヴァンジャンスはシュタイの言葉に耳を疑うようにして聞き返す。 「簡単に言うと、あの世界だけでなく、まだまだ救われない世界はたくさんあるので、ちゃっちゃっと救っちゃってください!ごめんね、全知全能で、世界を創世する神達であっても、間違いを起こしたり、失敗を繰り返す神をまだまだいるんだよね。前回みたい、神殺しまでしなくても良いと思うけど、出来るだけたくさんの世界を良い方向に導いてほしいんだ」  シュタイの言葉にヒイロとヴァンジャンスは唖然としながら話しを聞いている。そして、シュタイに続いてマリアモンテが話しを続ける。 「まぁもちろん。他の神が創世した世界に勝手にポンポンと送ることは出来ないので、また転生をしていただいて……と言う形になってしまいますが。でも、お二人の仲良しな願いにも添えることができますし」  神達の言葉にヴァンジャンスはため息をつき、ヒイロはダメ元で確認する。 「それって……オレらに拒否権あります?」  シュタイは笑って答える。 「そんなわけあると思う?もう決定事項です。それにキミ達だけしか出来ないことなんだよ。神ではないのに、神と同等以上の力を持った魂って他にいないから(笑)。それに2人なら絶対に間違った方向には進まないしね。加護というか役職も決めてあるんだ!平和請負人、ピースコントラクター、略してピーコン!ね、なんかカッコいい良いでしょ!」 「……。」  ヒイロとヴァンジャンスは笑顔の全能神の前で、無言のまま固まっていた。  
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加