エピソード03 〜託された使命〜

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エピソード03 〜託された使命〜

「平和……請負人?」 「ピースコントラクター……ピーコン?」 「そっ、平和請負人(ピースコントラクター)、略してピーコン!僕らの代わりに様々な世界を平和へと導く係!」 「それは具体的にどういうことをするんだ?何か約束事とかあるのか?」  ヴァンジャンスの問いにマリアモンテが丁寧に答える。 「まず期間は産まれてから……その世界が平和への安定修正がされるまで。残念ながら私の力では、他の世界に自然な形で転生させることしかできないので……ただし、帰りはこちらの判断で、さりげなく戻せます!」 「つ・ま・り!ボクが客観的に見て、不安定な世界の神に、さりげなーくプレゼント的な形で君たちを渡すから、安心して!」 「あの……それって大丈夫な感じなんですか?」 「転生ってことは記憶はどうなる?」 「何度も人生の経験している魂の記憶や意識を、いきなり器になる転生先の身体に入っても、許容の限界がありますので、転生先では、もの心がつく7、8歳ぐらいから、少しずつ時間をかけて身体と魂を馴染ませていき、記憶と今ある意識を、それまでの意識や記憶に時間をかけて融合していきたいと思います。最終的には15、16歳頃には今の意識に統合され、安定すると思います。」 「なるほど……確かに魂か強くても器になる身体や脳には限界があるか……」  ヴァンジャンスは頷きながらある程度理解したようだったが、ヒイロは続いて質問する。 「でもさ、そんなころまで記憶をリセットしてたら、使命とかコイツのこととか忘れない?」 「そんなことはありません。そのことに対しては、貴方方二人の結びつきは拙くありませんし、それに記憶の大本は私が大事に保管していますから」 「そんなもんかなぁ」  ヒイロは自信なさげに首を傾げる。 「当然、以前のように私や他の神達がお二人のサポートはスキルとしてできますのでご心配なく。ただあなた達の力は本当に神に等しい力を持っていますので、器になる身体のことを考慮して完全に意識が統合されるまでは、かなり力を制限させてもらいます」 「えぇ!?制限てどれくらい!?」 「とりあえず今の力の10パーセントぐらいに。それでもきっとかなり強いと思われます」 「すごく不安になってきた……」 「諦めよう。オレもこの世界にいて、薄々このようになるのではないかと感じていた。……でないと、個人的なオレの願いに付き合って何十年も修行に付き合ってくれるはずは、ないからな」 「はぁ、なんかこうもっと……普通な平和的に何事もない人生を生きていきたい……」 「はっはっは、それは2人とも無理だよ!なんたって、厄介ごとには必ず出逢う魂だからね!たまたまさっき2人の魂に、《ピースコントラクター》の称号を刻もうとしたら、すでにいくつかついていたしね。仕方ないけど、もう魂に刻まれちゃってるからどこの世界行っても、必ず苦労がついて回るよ」  シュタイは笑って話す。 「えっ!なにそれ怖い!?」  ヒイロは恐れおののき、ヴァンジャンスも珍しく慌てて問いただす。 「おっ、おい!ちなみになんて称号なんだ?」 「えっ?それ聞いちゃう?怒らないでね」  2人の問いにシュタイは笑顔で答える。マリアモンテは先程から微笑みから苦笑いへと変わっている。 「えっと、まずはヒイロさんね!えっと一つは《英雄》……一つの世界を平和へと導いてるからね。あとは《神殺し》……これも神を殺しちゃってるからだね。でも……これ、キミを知らない神にバレたらアウトだね。最悪消されちゃうかもねー。でもまぁ、なんたって一番は《苦労請負人》……なんでも周りの苦労を引き寄せて代わりに背負っちゃうんだって!ウケるね!」  それを聞いたヒイロは両手を地面につき、「ウソだー」と泣き叫んでいる。そして、それを隣で見ていたヴァンジャンスも同じく恐怖で震えている。 「でもって、ヴァンジャンスさんは……ウケる。一つ目は《救世主》……もちろん同じく世界を救ってるからね。あとは《下剋上》……なんかよく見えるけど、結局産まれた時点が絶望状態から始まるみたい!うん、今までの人生見てもそのまんまだよね!そして最後はやっぱり《苦労請負人》だって!」  次の瞬間、ヴァンジャンスもヒイロと同じようにうなだれていた。 「ね、どっちみち2人とも苦労する運命だからさ!それでも……2人ならそれを乗り越えて、世界を救う強さを魂に持っているから……。僕たちは以前も説明したかもしれないけど、他の神が作った世界に直接関われるわけではないんだ。前の全能神は見て見ぬふりをしていたけど、ボクにはどうしてもそれが出来ない。だって、いくら神が創造した世界だからって、そこに産まれてきた魂は、その神の玩具や道具じゃないんだからさ。だから僕は……マリアモンテやシヴァとか賛同してくれる神を募って、前回ヒイロさんに思いを託したんだ。そしてヴァンジャンスさんも、偶然やいろんな思惑が重なった感じだっただけど、やっぱり必然な的な運命だったんだと思う……本当にお願いします」  シュタイが真剣な顔つきで、初めて頭を下げる。それを見たマリアモンテも少し驚きながらも同じく頭を下げる。ヒイロとヴァンジャンスはすぐに立ち、姿勢を正す。そして、2人とも顔を見合わせ、頭を下げながらヒイロが代表で答える。 「……わかりました。任せてください。うまくやれるかはわかりませんが、なんとなくコイツとならなんでも出来る気がしますし。それに困ってる人達や子ども、生き物がいて、それを救える力があるなら、出来る限り救って幸せにしてあげたいですし。」  ヒイロの言葉にヴァンジャンスが続く。 「オレもコイツとは長い付き合いってわけでもないけど、間違った方向だけには絶対に行かないと確信があります。それにオレは、貧乏でも不幸でもなにがなんでも、真面目に頑張ってたり、正しい奴らが不幸になって、間違った奴らだけが幸せになるなんて許せないからな。そして、なによりも……いや、それだけだ。」  シュタイもマリアモンテもヴァンジャンスが言いかけていたことを悟っていたため、暖かく見守りながらシュタイが話す。 「ありがとう。その称号については怪しまれないように隠しとくから!あ、あと良い人生を。その都度、転生するからって人生は人生だからね。絶対自分達も幸せに生きなきゃ、他の人も幸せになんか出来ないからさ」  シュタイの言葉に2人は頷き、話が終わったところでマリアモンテが話し始める。 「それではヒイロさん、ヴァンジャンスさん、よろしくお願いします。それでは今から転生の準備をします。記憶は、はじめリセットされてしまいますが、良いですか?もちろん2人とも近しい関係にはなると思いますが」 「大丈夫です。オレらは腐れ縁なような気がしますので、必ず、無理しなくてもどこかで道が交わります」 「あぁ。記憶に関係なくコイツは絶対に世界を救うだろうからな。俺もまぁきっと、コイツと同じ時代に生まれてきたら必ず会ってそれに巻き込まれるだろう」 「やっぱり仲の良いお二人ですね。それでは行きますよ」  マリアモンテが神獣フェニックスの姿になるとヒイロとヴァンジャンスの身体が燃えるように消えていく。それでも熱さは感じなく暖かく包み込まれるように人魂の形になった。全能神シュタイはそれを優しく抱き、ある神のところへと連れて行く。  そう、それは《エル・ドラード》という世界を創世した神、アケディアス。 「あれ、よく見ると2人ともさらに称号が刻まれてる……ヒイロさんは《勧善》。ヴァンジャンスさんは《懲悪》。2人で《勧善懲悪》かぁ……やっぱり仲良しだなぁ」  全能神シュタイは何故か嬉しそうに笑っていた。
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