5人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はどこに行ったらいいのかわからず、病室の中を漂っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「星輝」
僕が声のする方向に振り向くと、そこには希咲がいた。
「星輝、迎えに来たよ!」
希咲は27歳の姿のままで、僕に手を差し伸べてきた。
僕が希咲の手を取ると希咲が優しく、
「さぁ、行きましょう!」
と僕の手を引いて案内してくれるようだった。
僕はどこに行くのだろうかと思ったけれど、きっと天国に行くのだろうと思って、あえて希咲に質問するのはやめることにした。
「希咲、赤ちゃんを出産する道を選んだことで、希咲の命を助けることができなかった!
僕の選んだ道は間違っていたのかもしれない…
本当にごめんなさい!」
僕が素直に謝ると希咲が、
「星輝の選択は、間違ってないよ!
私はどうしても星輝との間に授かった赤ちゃんを産みたかった…
そして無事愛華が産まれて素敵な家庭を作ってくれた。
私は本当に良かったと思っているよ!」
と優しく言葉をかけてくれた。
そしてさらに希咲は、
「星輝、長い間お疲れさまでした。
私の分も愛華に愛情を注いで、大切に育ててくれてありがとう!」
と僕にお礼の言葉をかけてくれた。
ふと気が付くと僕の体は病院の外に出て、街の夜景が美しく見える夜空を舞っていた。
夜の街には希咲が亡くなった日と同じように、クリスマスイブを彩るかのように雪が舞い始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!