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第一話:吊り橋とカッパの親子と地下室のサクラ(十二)
「いやいやいや!
待て待て待てって!
ちょっと香里奈ちゃん!?
その言い方はものすごく語弊があるんじゃないの!?
誤解を招きまくってるでしょうが!」
「何が誤解だ……!」
これまでの姿からは想像もつかない低く強い口調の中年に、驚きつつも苛つきながら、
「だから!
僕はクライアントの依頼に基づいた仕事上の調査活動として、そういう店で勤めるティーンズ女子の心理分析をするために客として潜入していただけなんです、そういう仕事もしてんですよ!
そこでちょうど香里奈ちゃんの初出勤の客になったんで、色々と身の上話を聞いて……!」
「そうなの……!
あたし……心理学的な検証だからとかなんとかって、言われるがままに心の奥の奥までのぞかれて弄ばれて……陵辱されたのよ……!」
「だからなんで急にそういう言い方すんの!?
何か恨みでもあるの!?
あの軽い質疑応答がそんなに嫌だったの!?
だったらなんかごめんね!?
でもそれで、他の遊び感覚や金目当ての子たちと違って大変そうだし、だったらこんな仕事してないでユサギ先生の研究室で何か書類整理とかそんなバイトでもしたらってここに連れて来たわけで、むしろ助けてあげたって言う方が正しいんじゃないの!?
お前もわかったら離せっての!!」
必死の弁解を述べながら胸元の手を振り払おうともがくトールだったが、
「ふふん、どうだか。
私がたまたまその時ここににいたから良かったものの、もしいなかったら、実際この研究所にある特殊な器具などを用いてどんな行為を強要していたことか」
「異常性癖」
いつの間にか少し離れた位置に並んでそのやり取りを眺めているユサギと真奈が、薄笑いながら言い放つ。
「先生まで火に油を注いで僕を陥れて一体何の得があるんですか!?
この場を丸く収めようとかそういう意思は無いんですか!?」
「特に無いな。
せっかく何やら面白くなってきているところじゃないか」
「『面白い』は正義、人類が恒久的に求めるべき真理」
「二人はすっかり仲良しですね!?
っていうかこの真奈ちゃんだってユサギ先生が助けてあげたんだからな!
いい加減離せっての!
僕らがいなかったらこの子たちもそのままおかしな道へ突き進んで、あんたもくそカッパとしてあの渓流で厳しい冬も越せずに儚い一生を終えていただろうが!」
その言葉に、ユサギと真奈に視線が移り手元が緩んだ中年から、どうにかトールが抜け出して距離を取った。
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