2. 招かざる少女 -1-

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2. 招かざる少女 -1-

 朝日が坂道を照らしている。  その坂道を同じ制服を着た男女が、同じ方向に歩いていく。  その方向にあるのは、“私立あけぼの高校”。  この辺りでは名門にはいる進学校だ。  そんなどこでも見られる登校風景の中に麻里江はいた。  麻里江がこの町に来たのは半月前。すぐに澪丸の住んでいたアパートを訪ねた。しかし、澪丸は行方不明で、部屋の中も物色された形跡がある。  なにかに巻き込まれた、麻里江はそう直感した。  手がかりがないかと、部屋の中を探しまわったが、それらしきものは見当たらない。  澪丸の本業である風水の道具もなかった。  失望して立ち去ろうとしたとき、麻里江の目が机の上のメモ用紙に止まった。  何も書かれていない白紙のメモ用紙だ。  麻里江はそのメモ用紙をじっと見つめていたが、机の引き出しから鉛筆をとりだすと、その一面を鉛筆で塗り始めた。  やがて、黒く塗られていく表面に白く文字が浮かんできた。筆圧で写った部分だ。  “あけぼのこう”  (なんだろう?)  そのメモを破り取り、ポケットにいれた麻里江は部屋から出た。
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