2. 招かざる少女 -2-

4/5
前へ
/106ページ
次へ
 この高校で火事騒ぎがあったことは、近所の噂で知っていた。  その現場の前に麻里江は立っている。  出火元の倉庫は立入禁止の札もなく、修繕も終わっているようだ。  麻里江はその倉庫のドアに手をかけた。  鍵がかかっている。  中をのぞけないかと、周りを歩いてみた。  「なにをしている。」  突然、後ろから声がかかった。  振り向くと長身の男が立っている。  香田だ。  「こんなところでなにをしているんだ。」  香田は再度尋ねた。  「なにって、ただの散歩です。」  麻里江は笑顔を見せて答えた。  「学校内で散歩とは暇のようだな。」  香田が麻里江に、不信の視線を送っている。  「今日、転校してきたばかりですから、あちこち見てまわっているんです。」  麻里江は素知らぬ様子で、答えた。  「ここには見てもおもしろいところはないぞ。」  「そのようですね。」  「もう昼休みも終わる。さっさと教室にもどりたまえ。」  「はい、わかりました。」  麻里江は素直に元来た道を戻っていった。  それを見送った後、香田も別の方向へ歩き始めた。     香田が向かったのは校長室であった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加