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この高校で火事騒ぎがあったことは、近所の噂で知っていた。
その現場の前に麻里江は立っている。
出火元の倉庫は立入禁止の札もなく、修繕も終わっているようだ。
麻里江はその倉庫のドアに手をかけた。
鍵がかかっている。
中をのぞけないかと、周りを歩いてみた。
「なにをしている。」
突然、後ろから声がかかった。
振り向くと長身の男が立っている。
香田だ。
「こんなところでなにをしているんだ。」
香田は再度尋ねた。
「なにって、ただの散歩です。」
麻里江は笑顔を見せて答えた。
「学校内で散歩とは暇のようだな。」
香田が麻里江に、不信の視線を送っている。
「今日、転校してきたばかりですから、あちこち見てまわっているんです。」
麻里江は素知らぬ様子で、答えた。
「ここには見てもおもしろいところはないぞ。」
「そのようですね。」
「もう昼休みも終わる。さっさと教室にもどりたまえ。」
「はい、わかりました。」
麻里江は素直に元来た道を戻っていった。
それを見送った後、香田も別の方向へ歩き始めた。
香田が向かったのは校長室であった。
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