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「本の位置とか、机の上のものの位置とかが、前の日と違っている気がして。」
「気がして?単なる勘違いじゃあないのか?」
「立樹さんはそんなことはないですか?」
清水が真剣な目で立樹を見つめたため、立樹は一瞬たじろいだ。
「おれはそんなことはないよ。」
「そうですか…」
清水はがっかりしたようにうつむいた。
「おまえ、疲れてるんだよ。明日はゆっくり休め。気晴らしにドライブでも行ったらいい。」
「ええ…」
清水は気のない返事をして、自分のコップをじっと見つめている。立樹は少し不安になった。
「あのときからなんですよね。」
清水がぽつりと言った。
「あのとき?」
「ほら、先週の火事の現場で見たあの奇妙な紋様。あれを見てからなんですよ。見張られている感じがしだしたのは。」
立樹の脳裏にも先週、焼け跡で見た妙な紋様の記憶がよみがえった。
「気のせいだよ。清水。あまり深刻に考えるな。」
一時間ほど飲んで、二人は居酒屋を出て、そのまま別れた。しかし、清水はアパートには戻らなかった。
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