1. 紋様はさいなむ -3-

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 『ああ、二日ほど時間をくれ。』  「たのむ。何かわかったら連絡をくれ。」  『了解』  立樹は携帯を切るとホッと一息ついた。  しかし、立樹は調査の結果を知ることはなかった。  翌日、立樹は失踪したからである。  その男は一時間前から机の上の写真をじっと見ていた。  火事の焼け跡の写真である。  床が焼け落ち、床下が見えている。 その中に奇妙な紋様がみえる。円の中に不規則な図形が石灰で描かれていた。二日前、友人の消防士から送られたその写真を、男は真剣な顔つきで見続けていた。  「やっぱり現物を見ないとはっきりしたことは言えないな。」  男は身支度を整え始めた。  ヤッケを着こみ、リュックサックにヘッドライトと中央に方位磁石が取り付けられた丸い板、地図などを押し込んで背負った。  机の上の写真を取り上げると、机から封筒と切手、便箋を取り出し、その便箋に何かを走り書きした。  その便箋と写真を封筒に入れると、切手を貼り、表にどこかの住所を急いで書いた。  封をしたその封筒をヤッケのポケットにねじ込むと、男はその部屋から出た。
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