1. 紋様はさいなむ -1-

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1. 紋様はさいなむ -1-

 老人は日の出前の道路を少し早足で歩いていた。健康のために毎日かかさず行っているウォーキングである。  東の空は茜色に染まっているが、前方の道はまだ蒼暗(あおくら)い。  それでも老人は一心不乱に歩いていく。  坂道に差し掛かり、上を見るとてっぺんが赤く染まり始めていた。数分もすれば東の空に真っ赤な太陽があがるだろう。  歩く速度が少し落ちたが、しっかりした足取りで老人は坂のてっぺんをめざす。もう少し歩けば、坂の上の高校の校舎が見えてくる。2時間後にはこの辺はその高校の生徒で埋め尽くされる。  ちょっと微笑んだ老人は、やっと坂のてっぺんにたどり着いた。  さすがに息が切れたか、老人の足がとまる。  息を整えて前を見ると、いつも見慣れた校舎にいつもと違うものが見える。  校舎から黒い煙が立ち上っているのだ。  (火事!)  老人はそう直感した。  {早く119番しなければ。}  気はあせるが、周りを見ても公衆電話が見当たらない。  そんな老人の目にコンビニの看板が目に留まった。  急いで中に駆け込むと、カウンターにいる若い店員に早口にまくしたてた。  「火事だ!早く119番を!」
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