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1 序章
【 エマ・ケリーの手紙 】
可愛い従姉妹のソフィアへ。
いかがお過ごしかしら。
庭のラベンダーが涼し気に揺れる様を見ると、暑さも幾分か和らいだような気持ちでこの手紙を書いているわ。
改めて私たちの結婚式に参列してくれて、本当に嬉しく感謝の気持ちでいっぱいよ。ありがとう。
無事に新婚旅行も終えて。
まあ時間が合えばお茶をして、互いに本を読んだり。会話がなくても一緒にいて安らぐの。
そんなとても素敵な日々。
ねえソフィア、私は幸せよ。
だから今日は以前から知りたがっていた、彼との思い出を綴ろうと思うわ。
ティータイムのお供として気楽に読んで頂戴。
まず、あの頃の私はいつだってこの婚約が煩わしくて仕方がなかったの。
いよいよ意識しなければならない年齢になると、常に「女は淑やかに慎ましくしていろ」と、さも常識のように周りが言う。特に父ね。
酷くつまらない家庭教師からのマナー授業などでも淑女については叩き込まれたわ。
けれど理解する事と受け入れる事は別。
そうね今思えば。
彼にだけは表情も言葉も取り繕う必要がなかったし、そういう態度で接しても決して怒りはしなかったのよ。
幼い頃からの仲だもの。
婚約者というより悪友でありライバルのように見ていたのだと思う……。
それから何より反抗期というものだったのかもね。
若気の至りよ。
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