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「眠れないって……だって、なんで……」
「……さっきから、なんでばっかうるせーよ」
浩平が憮然として口にすると、
「どうなったのか答えろって」
あまり聞いたことがないような低い声で、私を問い詰めた。
「……どうなったって、その、彼とは付き合い自体が終わったっていうか……」
「付き合い自体が終わったって、なんだよ?」
私の答えを待って、じっと合わせられる彼の目を、
「……。……浩平のところに……行けって……」
上目使いに見つめ返して話した。
「それって、なんだよ?」
「そっちこそ、なんだばっかりうるさい……」
いつもの癖でつい口ごたえをすると、
「肝心なところで、はぐらかすなよ」
身体ごと歩道脇の建物の壁に追い詰められて、顔を挟むようにして両手がつかれた。
「……おまえが、気になるんだよ」
目の前で、再び同じ言葉が低く切なげな声音で吐き出されると、ドキリと胸が高鳴った──。
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