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そう言ってカップを口元へ。深く息を吸い込むと、飲むことなくそれをソーサーへ戻し口を開いた。
「あー、こう言ってはなんですけど黛 瑠香さん。僕が思うに、貴女は聡明な人だ。それは世間一般で言うところの頭が良い人、と言う以上に。
きっともう、気付いているのではないですか?」
やんわりだけど、彼の目は鋭さをチラつかせた。
私の心を読むのは容易いということだろうか。微かに感じた動揺にも似た感触を喉元で落ち着かせた私は、薄っすらと笑みを浮かべる。
「それは犯人のことですか」
「そうです。身近にいる……そう思っているからこそ、ここに来たのでは?」
数秒間、視線が重なった。
「そうですね……否定はできません」
彼は落ち着いた様子で二、三頷き口を開く。
「なるほど貴女の素直なところは、やはりとても美しい」
「ふむ……それは喜ぶべきですか?」
「あはは、少なくとも悲しむことはありませんよ。
そういえば前回ここに来た貴女は、どこか心づもりをした面持ちにも見えました。もっとも、覚えてはいないかもしれませんが。
どうやら今日は、答え探しの小旅行となりそうですね」
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