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「死神に、なるかい? それとも君も、輪廻の輪をくぐるかい?」
唐突な質問。
おかしい。
私はあの時発作を起こし、そしてそのまま倒れた。誰にも発見されることなく、気付いた時にはここに居た。
目の前には私に語りかけてくる一人の男。いや、この声は女かもしれない。
どちらともつかない人物は言葉を続けた。
「輪廻の輪をくぐると、君の記憶は全て消える。死神になってくれたら、君の記憶は保証しよう」
さぁ、どちらを選ぶ?
男とも女ともつかない人物に選択を迫られる。
私は、私にはまだ、やりたいことが残っていた。それは恋だったり、家族との旅行だったり、そうだ、親孝行もしたい。大好きな友人たちにも会いたい。友人たちと綴ってきた記憶は、消したくない。
私の答えはこの瞬間、決まった。
「死神に、なります」
私の返答を聞いた人物に、扉を示される。その扉をくぐると、そこは真っ白な壁に真っ白な照明。眩しいその場所は、死神と言うイメージからは真逆の場所のように感じた。
どちらかというと、病院のような清潔さだ。
そしてもう一つ、私は違和感を覚えた。その違和感の正体は衣装だ。
「私、こんな服を着ていたかしら……?」
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