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無垢な笑顔、温かい雰囲気。クラスの男子だけでは無く学校中の男子、そして先生たちさえも虜にしてしまった伝説のマドンナ。
でもその夢華ちゃんが何の用でここへ来たのだろうか。見た所身なりはきちんとしている。借金相談では無さそうだ。離婚調停か。いや、彼女の満ち足りた笑顔からはそんな雰囲気は感じられない。左手の薬指には有名ブランドの結婚指輪が光っていた。ちょっとだけ胸が痛んだ。
「まあ座って」
ソファをすすめると夢華ちゃんは上品に腰を下ろしモデルばりに足を揃えて座った。さぞ良い所に嫁いだのだろう。これだけの女性だ。よりどりみどりだった事だろう。
「実は相談があるの」
来た。
「何でも言ってよ。俺で力になれる事だったら何でもするよ」
「ありがとう、助かるわ。友達が弁護士って心強いわ」
友達……。うん、確かに同級生として6年間同じ空間で過ごした。でもあの頃は恥ずかしくて話も出来なかったが。
「実はね、主人の遺言書を作ってもらいたいの」
「ああ、任せて。お安いご用だよ」
俺たちの年で遺言書なんて珍しい。余程の資産家なのだろう。
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