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 いちじく県バナナ市。果物の出荷量が全国一の豊かな町を、一人の女子高生が歩いている。  彼女の名前は柚原(ゆずはら)桃香(ももか)。レモンよりも明るく、オレンジよりも奔放な高校二年生だ。  二学期が始まって二週間。夏休みボケも落ち着いてきたし、ボチボチ勉強を頑張ろうかなー! と、鼻息荒くニヤつく彼女に、一人の男子生徒が近づいていく。 「よう桃香! 今日も鞄から桃が飛び出てるぜ」  彼の名前は梨本ドリアン。桃香とは幼稚園からの幼なじみだ。ヒリヒリと吹きつける秋風により、腐った卵のような体臭が辺りに広がる。 「えっ……あっ、ホントだー!」  両手で抱えていた鞄に目を落とす桃香。そこから、スイカ程の大きさをした桃が二個、ポロローンと顔を覗かせていた。 「もう、勝手に見ないでよ! エッチ!」  桃を鞄に押込みながら、ドリアンに向け中指を突き立てる桃香。 「あっ、も、桃香!? お前……風船になってるぞ?」
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