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三
「苺原……間違えた。桃香、そろそろ落ちてくるか?」
ひょっとこのように顔を歪め、四股を踏むドリアン。彼なりの、残骸を拾う準備らしい。
「まだかな……ん? あ、あれは!?」
ツッパリをしながら後ずさるドリアン。驚くのも無理はない。大量のシャインマスカットが落ちてきたのだから。
「……ふふっ、なごり雪ならぬマスカット雪かな? とりあえず食べてみるか」
仰向けで気絶している警備員の鼻の穴に挟まったシャインマスカットを拾い上げ、躊躇なく口の中へ入れようとするドリアン。そのとき。
「待ちなさいよー! 勝手に食べるなー!」
シャインマスカットから、ドリアンにとって聞き覚えのある声が聞こえた。幼い頃から耳に入れてきた、桃色のメロディーが。
「そうよそうよー!」
「うらららーん!」
「あっ! なんか体が軽い!」
なんと、ドリアンが手に取ったシャインマスカットだけでなく、別のシャインマスカットも言葉を発している。それぞれに、桃香の意思がこもっているように。
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