夜釣りにて

10/15
前へ
/15ページ
次へ
 僕はしばらく釣り針が揺れたあとで、糸を掴み、大物の〈ソレ〉をひっかけ、尻尾を持って強く引っ張った。 「ほら、かかった」西田が声を上げる。子どもたちが「ほんとだ」とはしゃぐ。  勢いよく引き上げられる糸を僕は強く引き返した。「これはかなりデカいぞ」「パパがんばれ」「絶対釣ってよ」「もちろんだ」  なんて茶番なのだろう、と思いつつも僕は〈ソレ〉を引っ張りながら左右に動かし、適当なタイミングで手を離した。「ほら、釣れた」「すごーい、大きい」「パパすごーい」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加