夜釣りにて

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「さっき、大きいのをひっかけてすぐにトイレに行ったんですよ。今、私、ベランダにいませんよ」  糸がベランダの手すりをこすりながら左右に激しく動いている。引き上げようにもなかなか引き上げられない。  下から山村さんの悲鳴が聞こえてきた。僕は立ち上がり、釣り竿を強く引いたが、〈アレ〉を引き上げることができない。 「時田さん、ヤバイよ。手を放して」  山村さんの声が響く。演技をしているとは到底思えなかった。
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