夜釣りにて

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 自宅マンションのベランダから釣り糸を垂らして、一時間が経った。 「釣れた?」  ベランダの窓を開けて部屋の中から妻が訊ねる。僕は振り向いて首を振った。 「やっぱりもっと上の階の方がよかったのかな?」妻が言った。 「関係ないだろ。それは」 「でも、三つ上の階の西田さんのところは昨日大量だったらしいよ」 「そうなんだ。それは羨ましいことだ」 「あなたも頑張ってね。クーラーボックス二つも用意しているんだから」 「血が出るまで腕を磨いてみるよ」 「期待してる。コーヒー淹れようか?」 「うん。お願いするよ」
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