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〈ソレ〉が引き上げられていく。上から「すごーい」「本当に釣れた」と子どもがはしゃぐ声が聞こえてきてくる。
また釣り針が垂れてきた。僕はまた〈ソレ〉をひっかける。引き上げられ、子どもがはしゃぐ声がする。舌打ち混じりのため息がこぼれる。釣り竿に目をやる。まだなにも引っかかっていない。
「どう? 釣れた?」パジャマ姿の妻が窓を開けて訊ねてきた。
「まだ」
「今日は時間かかるね」
「まあな」
僕は西田さんのところから垂れている釣り糸が見えないように彼女の前に立った。
「もう、終わるの?」
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