1人が本棚に入れています
本棚に追加
妻の背中を見つめ、リビングを出て行ったのを確認すると、僕はまたクーラーボックスから〈ソレ〉を取り出し、釣り針にひっかけた。「ちっちゃーい」「かわいい」「子どもかな?」と声が聞こえてくる。
「次は大きいのを釣るぞー」
西田さんのわざとらしい大声が聞こえてくる。僕は思わずクーラーボックスを蹴り上げそうになったが、なんとかこらえて、一番大きな〈ソレ〉を取り出した。
釣る針が垂れてきて、振り子時計のように揺れている。
「こうして動かしていると、釣れやすいんだ」西田さんが嘘をつく。
最初のコメントを投稿しよう!