5.愛らしい子犬に誘われて〈☆〉

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 貪るようにキスをした。胸板が張り付き合い、ぴた、と官能的な音を立てる。  頭はほとんど働いていない。理性を跳ね()け、本能が理仁を求め始めている。  くるくると絡ませていた舌を少し突き出してやると、理仁は席を譲るように、武史に口内を攻めさせてくれた。  隅々まで、舌全体で味わい尽くす。満足して口を離し、茶色いミディアムヘアをくしゃりと触ると、露わになった左耳でブルーサファイヤがきらりと光った。  きれいだった。彼によく似合っている。  無意識のうちに手を伸ばした。指先が触れかけた時、理仁に手首を掴まれた。 「やめて」  その顔に笑みは浮かんでいるけれど、理仁は笑っていなかった。「ごめん」と言って、武史はすぐに腕を下ろし、もう一度理仁にキスをした。  ほんの数秒間の冷ややかなやりとりをなかったものにするかのように、理仁は執拗に武史の口内を舐め回した。  舌先がだんだん痺れてくる。けれどそれさえも快感に変えてしまえるのが理仁だった。彼に触れられるだけで欲情した。 「脱いで」  武史が理仁の履いている黒いパンツに手をかける。 「()ってるだろ、もう」  ホックをはずしながら問う。理仁は肩をすくめ、ズボンと下着、それから靴下を取り去った。 「見てよ、これ」  全裸になり、ベッドの上で膝立ちになった理仁は、すっかりパンパンになっている自らの竿に手を触れた。 「誰のせいだよ、こんなにでっかくなってんの」  熱を帯びて赤らんだ先から、半透明の蜜が滴っている。  武史も同じように膝立ちになり、理仁を正面から抱き寄せた。 「オレのせいだな」  汗ばんだ素肌が密着する。勃起した二本のものが触れ合った瞬間、びくん、と全身に電撃が走った。  ビリビリと大きな刺激がからだじゅうを駆け巡る。心臓が高鳴って止まらない。 「やばいね」  抱き合っているせいで顔の見えない理仁の声が、頭の後ろから聞こえてきた。 「まだなにも始まってないのに、めっちゃ気持ちいい」  甘ったるい声だった。耳から溶けていくように、武史は黙って何度もうなずく。  どちらからともなく、先端をこすり合わせ始めた。濡れているおかげでなめらかに動く。ジェルを使っているみたいに気持ちいい。  理仁が唇を重ねてきた。武史もすぐにこたえる。  互いに口を大きく動かし、求め合う。からだが熱い。下は、もっと。  一度離れ、理仁は武史の腕を取ってベッドから降りた。素足で大理石調の床を蹴り、ベッドの向かい側の壁に武史の背を押し当てた。  理仁は武史の顔のすぐ横、壁にパンと手をついた。武史を囲うように、少し背伸びをしてキスをする。  もう一度、二人のものがそっと触れ合う。感情とともに一気に勃ち上がり、先から蜜が滴り落ちた。  一心不乱にキスをして、二人は性器をこすり合わせた。先がどんどん熱を帯び、次第に息が上がってくる。 「は……ぁっ……、……!」 「武史……っ」  理仁が首筋に吸いついてくる。救いを求めるように天井を仰ぎ、熱い息を吐き出した。 「なんだよ、その顔」  弾ませた吐息を声に混じらせ、理仁は汗を流しながら口角を上げる。 「めっちゃエロいよ、武史」 「うるさ……っ」  理仁の先端の動きが細かくなる。甘い刺激がほとばしり、抑えきれない感情が腹の底からせり上がってくる。  理仁が武史の竿に手を触れた。びくん、と鋭く反応し、理仁の嬉しそうな表情を誘う。 「武史も」  右手を掴まれ、理仁のものに触れさせられる。パンパンに膨らんだ竿は、沸いた湯の入った鍋のように熱い。  ゆっくりと、互いに互いを動かし合う。高ぶった情欲が、二人の口から官能的な声を漏らす。  赤らんだ頬。とろけた顔で見つめ合う。  最高だった。触れ合った性器に走る痺れは快感以外のなにものでもない。  手を離し、先だけで刺激し合う。再び手を触れ、上下に動かす。 「ぼくだけを見て、武史」  理仁が手の動きを速めた。 「その目には、他の誰も映さないで」  切れ長の目を薄く開け、武史は理仁を見た。茶色い瞳は、まっすぐ武史だけを見つめている。  陽多のことなど、少なくとも今は頭のどこにもなかった。目の前にいる子犬のような男だけを、そいつが傾けてくれる愛情だけを、武史は想い、受け止めた。  息を切らし、互いにとろとろの表情をして唇を重ねる。武史も理仁に合わせて手の動きを速くした。 「いける?」  理仁が問う。武史はかすかにうなずいた。 「一緒に、だぞ」 「もちろん。ぼくも、もう……っ」  手を離す。腰を揺すり、竿同士を激しくこすり合わせた。  なまめかしい二つの声が交差する。弾む吐息。額に浮かぶ玉の汗。  高ぶった感情が絶頂を迎えた。全身に熱いものがほとばしる。  我慢できず、武史は声を上げて達した。  白い液が理仁の腹と竿にかかる。理仁はその瞬間を待っていたかのように、「最高」とつぶやき、果てた。  互いのものが、互いの愛で濡れそぼる。言葉では言い表せない、優しく、あたたかい感情が駆け巡り、からだじゅうを包み込む。  壁に背を預け、武史は右腕で目もとを覆った。理仁と竿を重ね合った時の痺れる感覚が頭を離れない。 「バカ野郎」  誰にも聞こえないくらいの声でつぶやいた。達した時の快感がまだ抜けない。  クセになりそうだった。こんなにも刺激的な交わりは、めったに味わえるものじゃない。 「ありがとう、武史」  理仁が優しくキスをしてくれた。 「気持ちよかった」  (べに)()した頬をして、武史も小さくうなずいた。
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