彼からのお願い

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「留美。俺も早く彼女を帰らせるようにするからすまない。」 「解った。」 と、言ったものの一番苦手な事をお願いされてしまったよね。 そう思いながらも留美は、目的地に時間が無いそう考えながら急いで向かう事にした。 俊介の急なお願いは、留美も知っている俊介の部下「愛子」ちゃんなんだが、結婚して出産して育児休暇あけで復帰した子だった。 旦那さんは、違う会社で働くサラリーマンで彼女は夫にだけ頼って生きるのでなく自分も仕事をしていたいという女性だ。 これにも一悶着あったようで正社員でなくパートにしたらどうかという旦那さんの意見と正社員で働きたい彼女折り合いのつかない話 を何度も繰り返していたと言う。 上司である俊介に何度も相談してきたし留美も相談に乗った事もあるから知らない子ではない。 だから断る事はできなかったが・・ 「留美、駅の近くに「バンビ保育園」ってのがあるんだけどそこに息子さんを迎えに行って欲しいんだ。」 愛子さんの息子は、1歳半で今までは上手く時間までに迎えに来れたみたいだがどうしても今日は、仕事が終わらず迎えの時間に間に合わないと言う事だった。 バンビ保育園は、駅前にあるチェーン展開している託児所でわりと遅い時間まで預かってくれるのと待機児童が今だに多い中、認可保育園に入園出来ない子供を市の補助を受けて預ける事ができる事で有名だった。 だいたいは駅近くのビルの一階にあって園庭はないけど近くの公園を利用したり体操教室とかもあるらしい。 愛子さんは、先に相田留美が迎えに行くと園に電話を入れくれていたから受付で社員証と名前を言えば子供を引き渡してくれるという話だった。 だから受付で名前や社員証を呈示して緊張しながら帰り支度を待つ。 ここまで緊張したのは何時の事だろうか・・入社式以来かもしれない。 「お迎えの方ですか?宜しくお願いします。」 先生に抱っこされながら私以上に緊張している子供。 「明彦くん。ママをおばちゃんの家で待とうか。」 「ママ~。」 愛子さんの息子は明彦君といって普段は人見知りしない子だと聞いていたけど大好きなママを待っていたのに来たのが知らない人、泣いて当たり前か! 「ルミっていうのおばちゃん。ハンバーグ好き?」 「ハンバー・・ちゅき。」 まだ涙が残っていたけど泣き止んでハンバークに反応した明彦君は、小さな手を出してきてくれた。 子供って生まれて一年でかなりお話できるのねと思いながら明彦君を抱いてそのまま園と出ようとすると。 「すいません!お荷物が・・。」 「荷物?」 結局、明彦君を片手に抱いて買い物袋を持ってさらに肩には大きな「お荷物」で今日は、自分の荷物が少なくて良かったと本気で思いながら歩いてマンションに帰る。 重い・・幼児ってかなり重いしジッとしていない。 「あれなに?」 と見るもの総てに興味があるようで質問攻めにあう・・こんな質問攻めは仕事でもあまりない。 やっとマンションに到着した時は、ヘトヘトでこれを世の中のお母さんは毎日こなしているのかと思うと頭が下がる思いだった。
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