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本当に便利な時代になった。政府は、ついに全人類へのデバイス埋め込みに成功したと発表した。これで政府が管理するデータベースに登録されている全ての人間の体内に、超小型のトラッキングデバイスが入ったということになる。
政府は、「デバイスの埋め込みは個人の自由です」としきりにアナウンスしていたが、結局の所そんな自由は「世間」に生きる人類が保持できるものではなかった。
埋め込みが開始された頃は、大規模埋め込みセンターに押しかけるアーリーアダプターもいれば、激しく講義するリベラル団体もあった。しかし時間の経過とともに、人々のトラッキングデバイスへの憧れは増していった。
このトラッキングデバイスは、脊髄付近に埋め込むだけでその人のあらゆる情報をトラッキングする。そしてそれに基づいたサービスを無料で受けることができる。
脈拍や血圧などの健康状態はリアルタイムで監視され、異常が起こる前に適切な措置が行われる。また、脳内の思考パターンや趣向を取り出し、そこから分析して出された最適な娯楽を楽しむことが出来る。
例えば、トラッキングデバイスがフィレンツェへの旅行をサジェストした場合、その記録はデータベースに保存されているため、旅行のための交通費、宿代、食費(およびチップまで)などは全て政府が負担してくれるというわけだ。
体に埋め込むことに関して安全面を心配する声が多かったが、このデバイスはマイナス荷電を帯びておりタンパク質などの粒子が沈着しないため、生体適合性が基準値に達していることが証明されている。
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