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デバイス間は独自のネットワークを介して常時接続されているため、少し練習すれば他人の思考回路を覗くことが出来る。
最初は受け入れられなかったが、「慣れ」はあっという間に恐怖心すらも飲み込んでしまう。
そもそも、そんなことに大した恐れを感じないくらい、既に人々は情報密結合な時代を生きていた。外部デバイスに依存して行っていた操作を、体内で行うようになっただけだ。
思考回路が接続されているため、誰でも簡単に創作活動が行えるようになった。今までの創作活動には、人間の五感に訴えるように何らかの形で具現化することが必須であった。なんと不便な時代だっただろう。今では、頭の中でイメージしたものをそのまま脳の前段に置くだけで、接続されている人々に公開することができる。
誹謗中傷という言葉は死後になりつつある。トラッキングデバイスは、その人にとってネガティブな影響を与える人間からの情報は絶対に受け取ることができないようになっている。
このピアツーピア通信は、ある種の合意プロトコルに基づいて実現されている。実際のデータのやり取りが始まる前に、お互いのデバイスがそれぞれの人間性を交換して、入念に検証を行う。そのため、人間同士の情報交換の中で不快になる機会はまずない。人々は、「共感」か「称賛」のどちらかのリアクションのみを安心して受け取ることができる。
トラッキングデバイスの普及により、人々は完全な満足を手に入れた。
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