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逆恨ノ追跡者ー襲撃
*
天上院学園高等部体育館、その二階にある教員室にある応接間。そこで二人の男が向かい合わせで座っていた。一人は昨日事件に巻き込まれ警察に保護されていた崇人の親友、健太。もうひとりはバスケ部顧問にして崇人たちの学年の主任である土屋。
土屋は事件の聞き取り兼メンタルケアを行うために午後から登校してきた健太をこの部屋に呼び出していたのだった。
「松前………その、大丈夫か?昨日は散々だったらしいが………」
「はい………俺は大丈夫です。………でも、崇人が不審者に襲われていま入院してるって………」
「ああ、俺もそれは聞いている。というかお前も今日は休んでも良かったんだぞ?」
「…………家でいたら、落ち着かなくて」
顔をうつむかせている健太に対し土屋はフォローを入れるも、健太は顔は晴れず彼の頭には昨日の出来事の光景がぐるぐると巡っていた。自分は得体の知らない怪物に対して逃げること、死にたくないことしか頭に浮かばなかった。
しかし崇人は彼自身を囮に、自分を助けようとしてくれた、しかも迷いなく即決で。
この時に気がついてしまったのだ。崇人の気高さに、自分の醜さに。それが余計に彼を苦しめている。
「…………よしわかった、今から三善の入院している病院に行かないか?」
「え………?」
「今日の俺の授業は終了したし、会議もない。昨日あんな事あったから部活全体も念を持って今日は休みだしな。
どうせ今授業受けても頭に入らないだろ?………モヤッとすることがあるなら本人と話したほうがいい」
土屋の突然の提案に健太は肯定も否定もできなかったが、それに構わず土屋は早く自分の座席のものを鞄の中へと片していき、引き出しから車の鍵を取り出た。そして健太を急かすように声をかけ、彼も困惑しながらもソファーから立ち上がろうとした、その時であった。
突然、金属が圧し曲がるような大きな音が響く。
「?!な、何だ?!」
「校門の方からだ!!松前、隠れてろ!!」
健太にそう言った後、土屋は職員室を出て音があったと思われる校門方面を見る。土屋の視線の先では土煙が舞っておりその近くではくの字型に曲がった門が無残に吹き飛ばされていた。
しばらくすると土煙の中から一人の少年が現れる。その少年は所々返り血が染み付いているジャージを着ておりうつむきながらゆっくりと歩いていた。そんな少年に付き従うように頭と胴体は大型の犬四肢は人間女性の腕の化け物、瘰患も砂煙から姿を表す。音につられ校門の方を視た生徒たちからは悲鳴や焦燥の声がざわめき校舎からは離れた体育館前まで聞こえてくる。
だが、土屋にはその声は聞こえておらずただ、一言つぶやいた。
「………なんで、こんな大ぴらなところに怪異が………!!」
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