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崇人の願い
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おれのかぞくは、むかしはみんななかがよかった。
とうさんはきんゆうけいのかいしゃではたらくぶちょうしょく。
かあさんはおおてしんがくじゅくではたらくゆうめいこうし。
いもうとのさよはべんきょうねっしんでおれもそんけいするどりょくか。
おれはかぞくがだいすきだった。
でもおれのかぞくは、あるひをさかいにかわってしまった。
とうさんがはたらいていたところがじょうしのふしょうじによってつぶれてしまい、とうさんがりすとらされてしまった。
さいしょはとうさんもひっしにさいしゅうしょくしようとしてた。
でもかなりおおきなふしょうじであったため、それにはむかんけいであったとうさんもいいめではみられず、まえはたらいていたところよりにまいはかくがさがるかいしゃにはいり、そのつかいっぱしりになるのがせいいっぱい、というじょうたいだった。
そのひびがつづいたあるひ、とうさんはおかしくなりはじめた。かあさんにぼうりょくをふりはじめたのだった。
「なんでおれがこんなめにあわなきゃいけないんだ、ふざけるな」
………かあさんにいってもかいけつもしんてんもしないことをいいながらぼうりょくをふるうとうさんは、まったくべつのいきもののようにみえてしまった。
かあさんはとうさんにはけっしてさからうことはなかった。
でもあるひ、おれとさよががっこうからかえってきたとき、かあさんははりついたようなえみをうかべながら、おれたちのまえにたんこうぼんのまんがくらいありそうなかみのたばをだした。
それはべんきょうのてきすとだということはみたらすぐにわかった。………どのはんいがあきらかにおれたちがいまやっているはんいよりみっつはさきのたんげんであることも。
おれはさいわいなんとかできた、でもさよはできなかった。そのことをしったかあさんはさよのかみをひっぱり、りょうほほをつよくたたきはじめた。
おれはやめてとさけんだ、でもかあさんはそんなおれをつきとばしちばしっためでいう。
「わたしのきょういくで、あなたたちがあたまがよくなっていいだいがくかいしゃにはいれれば、きっとあのひともわたしをみとめてくれる………あのころにもどれる」
そんなことをちばしっためをうかべながらいったかあさんも、とうさんとおなじくおぞましいものへとなってしまった。
おれのかぞくはたったにねんであとかたもないほどくるってしまった。
とうさんはしごとでほとんどいえにはかえらず、かえってきてもかあさんにぼうりょくをふるう。
かあさんはとおさんのぼうりょくにははんこうせず、かわりにおれたちにたいしやつあたりのようにべんきょうをたたきこんだ。
さよはそんなせいかつについにげんかいがきて、がっこうでぼうりょくじけんをおこしたあと、じしつにひきこもってしまった。
おれもこのげんじょうをひっしにかえようとした、かえなければならないとおもった。
でも、もしここでへたにおれがかんしょうして、とりかえしのつかないじょうたいになってしまったら、そうかんがえるとこわくてなにもできなかった。
おれは、ただむりょくだった。
………だから、ちからがほしい。
ばらばらになってしまったきずなを、ちぎれてしまったぬのをぬいあわせるように、もとどおりにするちからがほしい。
もしも、それがてにはいるなら。
おれはなにもこうかいしない。
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