『因果』との契約

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『因果』との契約

「ふっ…………?!」  思い出したくもなかった悪夢を思い出し、先程まで眠っていた崇人は目を開け寝ていた自分の半身を起き上がらせる。起き上がる際体のいいたる所から鈍痛が生まれ、更に悪夢のせいか寝汗をびっしょりとかいているせいか体の違和感が凄まじいがそれは一旦おいておき周りを見る。  清潔な白で統一されたリネンや建物の内観、更に近くにおいてあったナースコール用のボタンや自分が寝ているベッドを囲むように置かれているカーテンなどをみるとここが病院ということがわかる。  自分は先程まで不審者と犬の怪物に襲われていたはず、だだしかしよく見れば窓からは明るい陽の光が差し込んでおり、すでに夜が明けていた。  と周りを見ていたその時であった。この病室のドアがいきなり開く音が聞こえ、カーテン越しに崇人が体を起こしていることに気がついたらしいその人物はまっすぐコチラの方へと歩きカーテンを開ける。  そこに立っていたのはよれたスーツを着て、無造作な黒髪に無精髭が目立つガッシリとした体格の中年男性であった。 「お、やっと目が覚めたか。三善崇人君、でいいかな?」 「………はい、あなたは?」 「私か?私は武智(たけち)(あきら)。一応、刑事をやっている。昨晩の暴力事件のことについて色々と聞きたいことがある。なんでもいいわかることがあったら教えてくれるかな?」 「………わかりました。お、僕の話でよければ」  そう言うと崇人は昨日の話の経緯を自分がしる限り事細かに話す。家を待ち伏せされたこと、そこから逃げたこと、家族が心配になったため戻ってきたこと。そこで暴行を受けたこと………あの正体不明の怪物のことは信じてもらえないと思ったため言わずにおいたが。 「なるほどわかった。それで、君には教えておこう。 現在、犯人は逃走し行方がつかめていない。そのため入院後もしばらくは警察が君と一緒に襲われた友人の警護につくことになった」 「逃走中………ということは誰が犯人なのかわかったんですか?」 「ああ。血痕が残ってそれをDNA鑑定にかけてな。………本当は秘密なんだが、君は被害者だ。だから特別に教える。  容疑者の名前は藤岡(ふじおか)雄二(ゆうじ)。私立御乙宮高等学校の学生だ。」  御乙宮、という学校の名前に何かを感じ取った崇人に対し武智は写真を一枚崇人に渡す。その写真は格好から見て運動部の集合写真であり、おそらく件の藤岡と呼ばれた人物に赤ペンで丸が付けられていた。  まるで囲まれた人物を見て、思わず崇人は戦慄し息を詰める。そう写真に写っていた人物は昨日のバスケの試合で最後に対戦した学校の主将と同じ顔であったのだ。 「まさか……っ!!」 「ああ君の思うとおりだ。藤岡は、君の学校が昨日部活の試合で対戦し、勝ったスポーツの名門、御乙宮のバスケ部キャプテンを務めていた。  多分、君を狙ったのはその関係だろうな」 「そんな、たかだか部活の試合で………!!それに俺も健太も反則なんて1つもしていないッ!!恨まれるいわれなんて……!!」 「落ち着きなさい。とにかくそう時間はかからず藤岡は拘束できるはずだ。君は安心して体を休め………」  と、その時であった。病室のドアがいきなり開くと息を切らしたスーツを着た若い男が入ってくる。武智は若い男性の行為に腹が立ったのか舌打ちをしつつ座っていた椅子から立ち上がり叱る為近寄る。 「おい、病室だぞ。入るときはノックぐらい………」 「それどころじゃないんです!!先程B班がコンビニいた藤岡を発見し、刑事の言う通り遠くから監視しようとしたそうですが、  気づかれてB班は全滅、藤岡は逃走したと連絡がありました!!」
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