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若い警察官の報告に武智はわずかに冷や汗を流すもゆっくりと呼吸を整え、目の前にいる自分の部下に確認を始める。
「………被害現場、藤岡がいたっていうコンビニは一体どこだ?」
「は、はい!!天上町一丁目の市営コンビニ「トゥモロー」です!!」
「チッ、やっぱりかそこは………!!」
「天上院学園の、すぐ近くのコンビニじゃないですか………!!まさかあいつ、健太を!!」
彼の報告に強烈な焦燥感を感じた崇人は、飛び上がるようにベッドから立ち上がろうとするも痛みのせいで、病室の床に倒れ込んでしまう。それもそのはず、奇跡的に五体満足で障害になるような怪我もなかったものの、普通の動物の何倍もの力を持つ怪物にぶつかられ、さらにその反動で木に体を打ちつけたのである。
まだベッドで体を動かすだけならともかく、立ち上がるなど不可能なのである。武智は床で倒れる崇人を持ち上げベッドへと再び寝かせると部下の方を向き指示を出す。
「………お前はこの子の護衛に加わってくれ。俺は天上院学園に向かう」
「そんな刑事、無茶です!!たった一人で行くなんて………!!」
「………お前らには説明しただろう。藤岡の力は、俺や桜庭と同種の力だ。下手に人数行っても死体が増えるだけ。
今はこれが最善だ、返事は?!」
「は、はいっ!!!」
部下の返事を聞き終えると、武智は足早に病室から出ていく。その姿からは凄まじい切迫感を感じ崇人は声をかけることができなかった。そんな微妙な雰囲気に反応したのか、若い警察官は崇人を励ますように話しかける。
「と、とにかく君は僕たちが守る。今は体をしっかり休めて………」
【ふふふ、無理だよ。怪異憑きでもない人間が怪異から人を守るなんて】
「ッッ?!!な、何っっっ?!!」
突然後ろから聞こえた鈴を鳴らすような軽やかな嘲り声に若い警官は急いで振り向くがその瞬間、なにか凄まじい力で顔を横薙ぎに殴られ壁に叩きつけられ気絶してしまった。あまりの突然の出来事にベッドで寝かされた崇人も目を見開き、あまりにも大きな衝撃からか警官を殴ったそれから、人の形をした黒い靄から目を離せなくなってしまう。
「お、お前は………何だ?!」
【ふふふ、はじめまして。私は『因果』の怪異、よろしくねお兄さん☆】
目の前にいるのは表情なんて存在しない黒い靄、しかしそれが明確な悪意を持っていることを本能的に察知した崇人は布団の中においてあったナースコールに手を伸ばしそのボタンを押そうとする。
だがほぼ同時に『因果』の怪異の靄が伸びるとそれは巨大な手の形を取り、気絶していた警官を握り込む。
【まぁ待ってよ。私はお兄さんとお話がしたいだけだから押さないで、じゃないと〜、
ここに新鮮な肉塊ができちゃうよ?】
幼い子供に言い聞かせるような口調ではあったが、残念ながら崇人には脅しには全く見えなかった。それどころか何かのはずみで警官が殺されても不思議ではない。
崇人は脂汗をかきつつ布団の中の握りこぶしを強く握絞めつつ、目の前の靄には問いかける。
「…………お前は、一体何だ?昨日の犬の化け物と何か関係してるのか………?!」
【あんな雑魚と一緒にされるのは不本意だけど、まぁアレと同類なのは確かかな。………ってそんなことより、悲しいお知らせがありまーす。
後5分38秒後、昨日君といたお友達が死んじゃうらしいよ】
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