逆恨ノ追跡者ー襲撃

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*  堅気としての自分の人生は終わった。天上院学園の校門を蹴り飛ばした時、いいやそれ以前に警察を手に掛けたときに藤岡雄二はそれを驚くほど素直に自覚した。  そしてそんな状況になっても彼の心情はひどく穏やかでもあった。なぜならば例え崇人と健太をあの日確実に殺せていたとしても、そもそも怪異の力を手に入れなかったとしても、  あの地区大会で負けた時点で、バスケ選手としての自分の人生は終わっていたのだから。 「ま、もうそんなのはどうでもいい。俺はただ、バスケ人生(大切なモン)の弔いをするだけ………そのために」 「な、何をしているだ!!止まりなさい!!」  独り言をぶつぶつと呟く藤岡は気づくと4,5人の教職員に囲まれていた。職員の手には刺股が握られ、その切っ先と彼らの瞳はは振るえながらも藤岡の方に向けられていた。  だが藤岡はそれを鼻で笑うと、両手を上に上げ声をかける。 「………先生方、安心しろよ俺はあんたたちにも野次馬共にも興味はない。………この学校にいる松前健太を殺したらさっさと帰るからどいてくれ」 「松前………うちの生徒のことか!!お前のような不審者に生徒を渡すか!!」 「………フン、瘰患」  必死の形相で藤岡に向かって突き出された刺股に対し藤岡が行ったのは、自分が使役する怪異の名を呼んだだけだった。その瞬間にさっきまで彼の三歩後ろに待機していた瘰患は一気に飛び出し、その爪で刺股を切り裂くと突き出した教職員を叩き伏せ地面に押し付ける。 「ぐぅぅぅあああ…………!!」 「あ、足立先生………!!」 【グググ、ウルサイ………】 「同感だが、まだ殺すなよ瘰患。………おいお前達!!俺のやることを邪魔するなよ!!もし俺が邪魔をされたと判断したら容赦なくコイツがこのおっさんを、お前らを殺す!!いいな?!」  藤岡の宣言に周りにいた職員たちはもちろん遠くから見ていた生徒たちも恐怖によって萎縮してしまい、動くことはおろか声を出すこともできなかった。そんな傍観者達には目もくれず藤岡は屈伸をし始める。 「瘰患、お前はここで見張ってろ。抵抗するやつがいたらお前の判断で食っていい。  松前健太はオレ一人で殺す」 【………ワカッタ】  いい子だ。とつぶやいた後、藤岡の体に明確な変化が生まれる。彼の皮膚を突き破るかのように体の内側から黒い液体があふれると、彼の顔と胴体部、右腕を包んでいく。しばらくすると黒い液体は凝固していき、形を成していく。  そこから現れた藤岡の顔には犬を模したような仮面が装着され胴体部には後ろに棘が生えた防弾ベストのような鎧、そして右腕には腕全体を覆う手甲と中折式の小銃が握られていた。  変身が終わった藤岡は一切の迷いなく体育館があるほうに身体を向け、人間離れした速度で向かっていく、  おぞましい逆恨み(復讐心)と殺意を燃やして。 『ころす………………殺す殺す殺す殺す、殺すッッッ!!!』
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