逆恨ノ追跡者ー蹂躙

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 自分の相棒の名前を呼ぶと崇人は手に持っていたクマのぬいぐるみ型のお針子をそのまま手放す。お針子は重力に従いゆっくりと地面に落ちると、そのまま水に沈むかのように地面に溶けていきその地点を中心に黒いシミが生まれ始める。シミは大きく広がるとそこから徐々に崇人の体の半分はある大きなクマのぬいぐるみが浮上してくる。  まさかあのぬいぐるみがあいつの怪異?とそんなことを藤岡が考えていく内にぬいぐるみはシミから少し前に歩きだし深々とお辞儀をする。 【ドウモミノホドシラズノオ兄サマと犬ッコロ。ハジメマシテ、ソシテ  サ・ヨ・ウ・ナ・ラ♡】  そういった次の瞬間、シミから棘のついた首輪が飛び出すとぬいぐるみの首に装着される。するとぬいぐるみの体から漆黒の棘が突き破るように現れたのちぬいぐるみは狂ったような笑い声を上げ、そのままその動きを止めた。ぬいぐるみの停止をトリガーにしたのか首輪から鎖が現れるとシミに向かって一直線に向かい沈んでいくと、シミから黒い液体が持ち上がっていき徐々にそれは人の体を成していく。そして、  その身姿を表界へと顕現させる。 【狡挫僂………それって私の名前?もう少し可愛いのにしてほしいんだけど?】 「黙れ、小狡いお前にはピッタリの名前だ」 【ひっどーい、せっかく貴方好みの美少女の姿になってるっていうのに〜】  黒い液体から現れた小柄な少女、狡挫僂はたしかに自らが言うように美少女と呼べるほどの美貌を持っていた。頬に黒い継ぎ接ぎ模様がある以外はシミひとつない色白の肌にツーサイドアップに纏められた銀色の長髪に紫色の輝くような目、どれも他者を魅了する虜にできるレベルであった。来ている服は継ぎ接ぎ模様が所々に入った白と紫で纏められているゴスロリファッションであるが、スカートの丈は屈めば下着が見えそうなほど短く上服も手をスッポリと覆う袖と分離と分離し脇が見えているなど、もしゴスロリ服を愛好しているものから見れば眉をひそめるようなデザインであった。  しかしそんなことは狡挫僂は気にせず可憐に体を一回転させ両手に持っている鎖を操りその先にいる首輪を着けられたくまのぬいぐるみ、を模したモーニングスターを構え、藤岡と瘰患に目を向け舌なめずりをする。 【じゃ、お兄さん。足止めしとくからそこの二人を連れてって。早く帰ってきてよ〜じゃないとこわ~い男の人と犬っころに慰み者にされちゃうかも☆】 「………俺よりも数倍は強いくせによく言う………。まぁいい頼むぞ」    
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