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狡挫僂にこの場を任せた崇人は踵を返し気を失っている健太と引っ黒い帰った車の中で気絶していた土屋を抱え、後者の方へと走っていく。藤岡は当然それを邪魔するべく銃口を崇人の背中に向けるが。
【何をしてるの〜?あなたの相手は、私だよっ!!】
「っ?!グアアア!!」
気を取られた隙きに一瞬で接近していた狡挫僂がモーニングスターを振りかぶり、藤岡に向かって叩きつける。自らの能力によってギリギリのところで察知できた身を翻し紙一重で回避するが、その風圧と衝撃波で弾き飛ばされ地面に転がる。狡挫僂の一撃に藤岡はむせこむが、間髪入れずに狡挫僂は嗜虐心に満ちた笑みを浮かべながら再び襲いかかっている。
「………ヒィ!!く、来るなぁ!!!魔獣弾!!」
喉で小さい悲鳴を上げながらも藤岡は銃を構え弾丸を撃ち放つ。放たれた弾丸は今までのと違い、獣の頭部を模したオーラを纏っており、その特大のアギトを狡挫僂へと向けていた。それに対し狡挫僂は鎖を引っ張りぬいぐるみモーニングスターの頭部を持つとそれを自分の足元に叩きつける。その際に発生した衝撃波によって狡挫僂の小柄な体は浮き上がり獣の弾丸を飛んで回避する。
しかし弾丸はジャンブした狡挫僂を追尾するかのように物理的にありえないない角度でカーブ彼女の背後を襲う。
「バカがぁ!!その弾丸には『追跡』の異能が乗っている!!当たるまでお前を追跡するぞ!!」
【そ、それじゃ………こうしちゃお☆】
空中に留まる狡挫僂は鎖を持つ手の力を入れるとそのまま体をねじり、その反動を生かしてモーニングスターを振り回しながら体をコマのように回転させる。獣の弾丸は振り回されるモーニングスターにぶつかると一撃で霧散してしまい、逆にそのオーラがモーニングスターに纏わりついてしまった。
「な、何ぃ?!」
【そ〜〜れ、倍返しっっ!!】
自分の必殺の弾丸をあっさりと破られた藤岡はその場で固まってしまいただ見ていることしかできない、空中で魔獣弾丸のオーラをまとわせたモーニングスターを振りかぶり自分に向かって振り下ろそうとする狡挫僂の姿を。
狡挫僂の一撃の重さはわかってしまっている。回避したにもかかわらずあのダメージ、もし直撃してしまえば怪人化した体でもどうなるか、それを想像してしまえば………。
「あ、ああああああああ!!ら、瘰患、俺をかばえぇぇぇぇ!!!」
恐怖に駆られた藤岡は両腕を前に出し自分の怪異に叫びながら命令を下す。避けることはできないことを直感で理解した藤岡は瘰患に盾にし、少しでもダメージを減らそうと考えたのだった。
しかし、その瘰患が自分の前に飛び出すことはなかった。予想もしなかった現実を認められないためか狡挫僂の攻撃を前にして藤岡は先程まで瘰患がいた場所に目を向ける。その視線の先には、
しっぽを丸め、体が遠くで見てからもわかるほど震え怯えている瘰患の姿があった。
「らい、か、ん…………!!!なにやってんだぁあああああおおおおおああああああああああああああッッ?!!!」
自分の命令を無視し怯え震える怪異に怒鳴りつけるが、それはすぐに断末魔に変わる。なぜならば狡挫僂のモーニングスターの一撃が藤岡の顔面に直撃し駐車場外の森林道路にふっとばしたからだ。
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