逆恨ノ追跡者ー蹂躙

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 この危機的状況に似合わない軽い声が聞こえ、藤岡は体ごと声の方向に向ける。その先には白い鉄製の鎧と紫色のボロ布を継ぎ合せた異様な服装をした怪人と露出の高いゴスロリ服を来た白髪少女の二人組、崇人と狡挫僂がいた。  瘰患は目で見てわかるほど怯え、藤岡も瘰患に対してかなり大口をたたいていたものの目の前に二人を再び見たことで恐れが前に出たのか、腰が引けてしまっていた。  一方崇人と狡挫僂はそんな一人と一体を無視し何かを確認し始める。 「狡挫僂。が来る時間は変わってないか?」 【変わっていない………と言いたいところだけどこの事件に大分私達が関わっちゃったせいでもう殆ど予知できないし、異能の力もアクセルベタ踏みで使っちゃったから………  多分察知して来ちゃうんじゃないかな?今すぐにでも】 「そうか…………なら急いだほうがいいな」 「な、何の話を………?!!」 「気にするなよ、死ぬあんたには関係ない」  藤岡の問いに対し崇人は冷徹に着るとボロ布の方から一本の投げ短剣を取り出し、持っている手を振り絞りそのまま短剣を一直線に藤岡めがけて投げつける。藤岡もそれに反応し銃を構え撃ち落とそうとする。だがその瞬間、  信じられない現象が起きた。 「…………『因果(インガ)鏖縫(オウホウ)』。百本短剣(ひゃっぽんたんけん)」  崇人がつぶやいたその時、一瞬短剣が歪むと次瞬きした時にはそれは何十本にも増えており更にその切っ先は一寸の狂いなく藤岡、瘰患に向けられていた。  一瞬で数か増えたことに目を向きながらも藤岡は銃弾を撃ち込むも単発銃では跳弾を含めてもせいぜい7,8本を弾いたのみ、残りの全ては容赦なく藤岡と瘰患に突き刺さる。大量の短剣が突き刺さり血が吹き出だし藤岡は悶絶するが喉にも刺さってしまっているため声を上げることもできずゴポゴポという音だけがででるだけであった。  確実な致命傷、もうすぐ来るであろう死、しかしそんなものにも構わず藤岡は驚愕に染まった瞳で崇人と狡挫僂を見る。 「………どうせ最期だ。種明かしをしてやるよ。  狡挫僂は『因果』の怪異。コイツが憑いた事によって得た俺の怪異能力の名は因果鏖縫。  色々と制約は多いが、過去に干渉し現実を変えることができる力だ」 【なかなかに素敵な力でしょ?】 「か………こ、かえ………?!」  二人がいともあっさりと話し始めた自身の能力の詳細に口から血を吐き出しつつ藤岡は戦慄する。  過去を変える力。自分の持つ「対象者のみに限定に働く超五感」能力とは明らかにスペックが違いすぎる力、もしかすればブラフを言っているだけかもしれない、そう思いたくなるような異能であった。しかしもしもブラフだとするなら死にかけの相手に………圧倒的格下にそんな面倒なことをするわけがない。それにもし本当にヤツの言っていることが本当なら今までの現象にすべて説明がつく。  致命傷を負っていた健太の傷がすべて治っていたのは「藤岡に暴行され致命傷を負った」という過去を消し去ったから。  崇人が投げた短剣の数が増えたのは「投げたのは1本ではなく100本」というふうに過去を改変したから。  もはや相手が嘘を付いていないことは藤岡自身がわかってしまい絶望の二文字が脳裏に現れる、しかしそれと同時に炎のような怒りが生まれきしむほど歯を食いしばる。  敵がまだ諦めていなしことを知りながらも崇人と狡挫僂はゆっくりと近づきながらそれぞれ短剣とモーニングスターを構える。 「………人は現在を懸命に生きることはできる。未来に希望を持ち進むことはできる。ーーーだが過去だけはどうすることもできない…………俺以外にはな。  俺はこの力を使って平穏と幸福を取り戻す。親友や恩師……家族が笑っていられる世界を…………今度こそ作って守り切る。  …………その世界にお前らはいらない」 「…………たらたら、語っ、てん………じゃね………ぇぞ………この、チート野郎ぉ!!!!」 【グゥ…………アアアアアアアアアア!!!!】  近づいてきた崇人に対して藤岡は喉を治し力を振り絞ると握られた銃身で殴りかかり、瘰患も腹をくくったのか口を大きく開き噛みつこうとする。しかし崇人はわずかに嘆息してから短剣で悠々と受け止め、狡挫僂も残虐な笑みを浮かべながらモーニングスターの鎖を噛ませる。  最後の悪あがきが止められた、そう考えるのが普通の状況。しかし藤岡にとってこの状況は予想できたものだった。彼は叫ぶ、自らのすべてを賭けて崇人を殺すための最後の奥の手の名を。   「かかったな…………!!禍神(まがかみ)舞台(ぶたい)、『餓狼狩刈里(がろうかりがり)』!!開場!!!」  
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