逆恨ノ追跡者ー閉幕

1/4

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

逆恨ノ追跡者ー閉幕

 藤岡の叫びとともに景色が崩れ始め変化していく。周りの木々のせいで薄暗かったものの明るく輝いていた太陽は消え去り、その代わり爛々と光る赤い月が昇り崇人らを妖しく照らす。草木が生えていた地面も枯れ果てたようなひび割れだらけの荒れ地に変わってしまっていた。  あまりの環境の変わりようになにか予感を感じ取った崇人は狡挫僂とともにバックステップをし藤岡、瘰患から距離を取る。 「これは………禍舞台?」 「………いいや?違うなぁルーキー、ここは、禍神舞台。術者を………隠すだけの禍舞台とはわけが違う。ほら、見ろ俺の体を。  お前にやられた傷がもう完治してるぜ?」  そう言いながら藤岡は自分の体を見せつけると崇人もわずかに黙る。たしかにヤツの言う通りさっきまで体に刺さっていた短剣は排出され、無数の切傷は音を立てて目に見える速度で治っていた。またほぼ半壊していた怪人の鎧も完全修復されており隣りにいた瘰患も体が全治し、更に怯えていた目にも自信が戻っていた。 「………傷を治癒する結界ということか?だがそれで俺とアンタ、狡挫僂と犬っころのスペック差はひっくり返らないぞ」 「バカが………まだ勝った気でいるのか?………確かに、前半戦はテメェの勝ちだ。だが後半戦!!ここでテメェをぶち殺せば俺の勝ちだ!!  禍神演黙(まがかみえんもく)餓狼無間追刑(がろうむげんついけい)!!!」  藤岡が叫びを上げると荒れ地の地面から人間大のクリスタルが6個飛び出し、空中に浮かび始める。更にそれに呼応するように闇空に浮かぶ赤い月6つに分裂しクリスタルはその光を吸収する。  青いクリスタルは月の光を吸収し真紅に染まっていくとさらにクリスタルを通して無数の光の線が地面にあるクリスタルの影に届くと、影から浮き上がるように黒一色の狼の怪物の群れが現れる。  黒狼の群れは無機質な眼を崇人、狡挫僂に向けると逃げられないように取り囲む。 【ありゃりゃ、文字通り獣に囲まれちゃった〜。コウちゃんの貞操ピ〜ンチ】 「茶化してる場合か。………これは禍舞台の発展技みたいなものなんだろ?俺にはできないのか?」 【将来的にはできるようにななるよ。でも流石に怪異憑きになったばかりでやるのは難しいかな?】 「そうか………それじゃしょうがない」  狡挫僂の説明受ける崇人、それに構わず50を軽く超える黒狼は周囲から一斉に襲いかかる。全方位からの攻撃、これを同時に捌く方法など本来ない、死一直線。  だが、崇人の半々仮面の奥の目から希望は消えず、狡挫僂は舌を出し狂笑を浮かべながらモーニングスターを振りかぶる。 「百本短剣・拡周(かくしゅう)!!狡挫僂、狂熊炸裂棘(きょうようさくれつきょく)!!」 【アーハハハハハハァ!!!】  自身と相棒の技を叫んだ崇人は自身の投げた短剣を100本に増やすと自身の力で本数を変えただけでなく『投げたのは前一方向ではなく、自分の周囲全部』と因果を改変し周囲一帯に短剣を放つ。  狡挫僂は怪異を強化する怪異憑きの呪文、怪言を受けると笑い叫びながらモーニングスターを荒ぶらせ振り回す。この感ぬいぐるみモーニングスターに生えていた棘は周囲に発射され、新たに生え再び発射され続ける。また棘は刺さると対象を内側から膨張させ花火のように散らせていく。  これら2つの技が重なった結果、それを端的に説明すると。  地獄絵図、影でできた黒狼たちの短剣刺さり体爆ぜ、黒い臓物を撒き散らす地獄そのものであった。 「…………シンプルに薙ぎ払う、ただそれだけだ。さぁ後半戦できっちり殺す(勝つ)ぞ」 【はぁーい分かりました、使える(愛しい)ご主人さま♡】
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加