逆恨ノ追跡者ー閉幕

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「………『因果鏖縫』、目標変更………、『魔神獣牙弾のターゲットは俺ではなくアンタだった』」 「………っ!!!なん、で…………かい、いのちか、らに干、しょう………でき……!連、ぞくして、いの………つか……!」 【おやおやこのお兄さんド雑魚の癖になかなかしぶといねぇ。犬っころの方はもはや何もできないってのに。………ねぇねぇご主人さま?なんでこんな状況になったのか教えてあげたら?  具体的にいえば『なんで怪異の力に干渉できたのか?』『なんで連発して使用できたのか?』を中心にね♡】  瀕死の瘰患の上に座りガワだけ見れば可愛らしくお願いする悪魔のような少女怪異、 狡挫僂に対し崇人は面倒そうに怪異の鎧の上から頭をかくがため息を付きつつも歩き出し瀕死の重傷で倒れている藤岡の前に行き彼を見下ろしたまま話し始める。 「………わかったよ。まず、あんたは勘違いしていた。確かにアンタとアンタの怪異に対して因果操作をすることができなかった。しかしそれは別にこの異能の本来の規格ってわけじゃない。  単に容量が足りなかったんだよ」 「よ、う……りょ………」 「そう、容量。現時点での因果鏖縫による1日過去改変限界回数は全部で6回。だがそれとは別に限界容量も存在する。俺の投げ短剣や怪異の力が宿っていない人間物質なら発動から5分前までの過去をある程度自由に書き換えることができる。  だが、怪異憑きや怪異本体に使うなら話は別だ。怪異同士の力が反発しあって必要以上に力を削られて発動されてしまう。  具体的に言うならば、もしアンタを殺すと因果を変えた場合…………健太を助けることができない」  崇人の言葉にただでさえ止まりかけの藤岡の呼吸は止まりそうになる。気づき察してしまったのだ。自分を見下ろす崇人にとってこの戦闘は絶対に自分を逃してはならず絶対に勝たなければならない戦いなどではなかったのだと。っ松前健太を救った時点で自分の殺害、いや駆除は「今日中にできたらいいな」程度のものでしかなかったと。  その事実に血を多量に含んだ口内の奥歯をきしむほど噛み合わせつつ言葉を紡ぐ、残った力すべてを最低限の再生と攻撃に回しながら。 「………魔神獣牙弾はあくまで怪異の力の一端………だから干渉できた…………じゃあ、連続して使えたのは………!!」 「ああ、そっちはもっとシンプルだ。ーーー単に連続で使えないようなフリをしただけだよ。  ………あんたみたいに半端に見る目がある奴にはよく効く」  その瞬間、藤岡の頭の中で何かが切れた。藤岡はバネのように飛び上がると血反吐を吐きながら咆哮を上げ右手に握られていたヘシ曲がった銃を鈍器のように崇人の頭目掛けて振り下ろす。しかし崇人はそれを見てから反応しあっさり左手で受け止めてしまう。  最後の悪あがきも終わり、だがそれに構わず藤岡は力を込め続ける。 「ふざけんじゃねぇよ………このクソボゲがぁ!!お前みたいな、お前みたいなぁ!!神が悪ふざけで作ったみてぇな連中のせいで………俺みたいな真面目に頑張っている人間がいつも理不尽を被ってるんだぁ!!!  オラァ頭かち割るから手ぇどけろぉ!!!」 「本当に救いようがねぇなアンタは。…………温存するつもりだったが、やめだ」  仮面の奥の目から殺意以外のあらゆる感情が消えた崇人は血を吐き出しながら喚き続ける藤岡の顔面に右掌を当て思いっきりつかむ。骨がギシギシとひび割れ音を上げるほどの力に藤岡は一転悲鳴を上げつつ自分の左腕で崇人の右腕を叩き外そうとする。だが崇人は一切動じず逆に力を強める。 「怪異は瀕死でアンタは再生と攻撃に残りの異能の力を回したせいで、アンタはもうガス欠だ。  これならギリギリ容量内で使える………!」 「!!よ、よぜぇぇぇぇぇ!!やべろぉぉぉぉぉこの下ずやろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「『因果、鏖縫』………!!  『全身』!!!『捩じ切れて死ね』っっっ!!!」  藤岡の命乞いとも罵倒とも取れる叫びを一切無視し崇人が叫んだ次の瞬間、  藤岡の頭が手足が上半身と下半身が安物の人形のように180度ぐるっと回転しあたり一面に血を撒き散らせた。  ーーー自分を鑑みず他者と世界に逆恨みし続けた追跡者は、目も当てられないような凄惨な最期を遂げたのだった。  
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