壊れ狂う日常

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*  二人を襲った不審者の男は住宅地にある公園にあるトイレの個室に入り苛立たし気に指を鳴らしていた。途中まで追跡できていたのは良かったものの彼らが繁華街に逃げ込んだことで状況は一変する。  もちろん瘰患の力ならば警察等何十ダースいようが相手にもなるはずがない。だがしかし、閑散とした住宅街で力を使うのと人が多い繁華街で力を使うのはあまりにリスクの差がありすぎる。  不審者は確かに崇人と健太を殺したい、しかしそのために自分の人生をドブに捨てるきなど毛頭ないのだ。そのため、不本意ではあるものの今日の攻撃は一旦ここで止めにして、後日奇襲して息の根を止める方針に切り替えようとしていた。  とその時彼の閉じているトイレ個室のドアにノック音が響く。一回した後一拍おいて二回、更に一拍して三回と決められたリズムで叩かれると、不審者はそのままドアを開ける。  彼の視線の先にいたのは、禍々しい犬の体に女のほっそりとした腕を四肢とする怪物、瘰患であった。普通の人間なら絶叫でもしそうなシチュエーション、この怪物を呼出した張本人である不審者の男は当然焦らない。だが、そんな彼も瘰患の報告にはわずかに眉を上げる。 【ホウコク、エモノノウチノイッピキ、コッチニカエッテキテル。ドウスル、主?】 「………わざわざ戻ってくるだと?他に人は、警官の姿は?」 【イナイ、ヒトリダケ】  手を出しづらい繁華街から出しやすい住宅街(この場所)に戻ってくる、これをただラッキーと思えるほど不審者も愚かではなかった。 「(まさか……奴もか?………いや、ないな)」  頭の中で浮かんだ可能性を一笑に付し不審者は否定する。仮にあの靄が崇人の怪異だとすれば瘰患を叩き伏せるだけの実力にもかかわらず全力で逃げ出す理由などない。  あの靄のことは気になるし、怪異憑き(自分と同類)でなにのならどうしてここに戻ってきたのかわからないという不安要素はあるが、同時に殺害のチャンスであることに変わりはない。 「瘰患、ヤツの居場所は?」 【ココカラ北西ノホウニアル大キナ広場、ソコニイル】 「大きな広場………確かこの辺には運動公園があったはず、そこか。  ………今度はやさっきのような油断はしない、  奇襲で確実に息の根を止めてやる………!!」  怨嗟に満ちた声でそうつぶやくと不審者は公衆トイレから出ると、瘰患が言っていた北西方向を睨みつけそのまま歩いていく。  待ち受ける崇人に逆恨の復讐者が再び襲いかかるのは、もはや目前に迫っていたーーー。
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