壊れ狂う日常

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 そう叫ぶと、崇人は手に持っていた外側のスマホカメラを瘰患へと向けると、画面をタップする。すると薄暗い世界から一転、眩しいほどの光がスマホから放たれ、宙を浮いていた瘰患は怯み地面へと落ちてしまう。  予期せぬ自体に不審者は指示を出し立て直そうとするが、崇人にとってこれが生存へのラストチャンス、見過ごすわけには行かない。 「な、何をしている!!瘰患早く立………!!!」 「させるっかぁ!!!」  瘰患に指示を出そうとした不審者に目掛けて崇人は手に持っていたスマホを真っ直ぐに投げつける。投げられたスマホは不審者の顔面右上部にあたり、痛みのあまりか不審者は直撃した部分を抑え目線を離してしまう。  その隙きに崇人は不審者のとの距離を一気に詰め彼の後ろへと回り、自分の右腕を不審者の首へと巻きつけて半分本気で閉め始める。  俗に言う、チョークスリーパーの状態である。 「は、離せ………!!」 「そうはさせるか………悪いがこのまま落とさせてもらう………!!」 「………!!!ら、瘰、患……!!な、なんとかしろぉ………っ!!」  掠れ声で瘰患に指示を送ると、怯んでいた瘰患も起き上がり不審者を助けようと彼に近づく。だがしかし瘰患はあることに気がつき、思わず自分の爪を見てしまう。  確かに不審者のによって強化された自分の爪はそのへんのものなら何でも切り裂ける。だがしかし、そんなものなんの意味も成さない。なぜなら今狙うべき敵、崇人は主人を後ろから絞めながら瘰患の前に盾のように前に突き出しているからだ。だったら後ろの崇人だけに攻撃するよう調整すればいい、という簡単な話になるが瘰患にはそのような精密性はない。  そのため相手の後ろに回り込むように動くも崇人に対応されてしまい、彼は不審者ごと体を乱暴に動かして再び自分の前に出されてしまう。思わず瘰患は不機嫌そうに唸り声を上げる。  とその時であった。極限状態で締め上げる力を強めている崇人と意識が半分飛びかけている不審者の耳に聞き覚えのある音が聞こえてくる。それは、  パトカーの、サイレン音であった。  援軍がやっと来たことにわずかに崇人は笑みを浮かべるが、その瞬間不審者は最後の力を振り絞り、大声で吠える。 「瘰……患…………!!おれ、ごと………突き飛ばせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「っっっ…………?!!」 【グルル……リョウ、カイッッ!!!】  不審者から指示を受けた瘰患は地面を思いっきり踏みしめ、そのまま弾丸のごとく飛び出し二人に思いっきり体当たりを繰り出す。速度の乗った大型単車にでもはねられた様な衝撃が発生し二人共突き飛ばされ、それぞれ後ろに生えていた木々に体を打ちつける。  崇人も口から血を流し地面に倒れ込み不規則な呼吸を繰り返す。その間に直撃したはずの不審者は同じく口や鼻から血を流しフラつきながら立ち上がり、瘰患の背中にまたがる。 「……………今日は、引く………。だが俺は、俺の人生を………邪魔した、お前らを絶対に、許さない。  必ず殺す、必ず、だぁ!!!」  そう吐き捨てると瘰患の体は大きく飛び上がり不審者を連れたまま夜の闇へと消えていくのだった。ひとまず危機が去ったことにわずかに安堵するが、口からとめどなく出る吐血が彼に命の危険を再び教える。 「やば………意識、と、ぶ………………!!」 「おい君大丈夫かっ?!」 「救急車、早く救急車を呼べっっ!!!」  自分の近くで何やら焦った大声が聞こえてくるが、崇人の意識は闇へと溶けていき、ついにはぷつんと途切れてしまった。 * 【………へぇ、中級怪異程度とはいえ人間があそこまで粘るとは、  やっぱりあの子、あたりだ】
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