Cheek Dyed Beginners1

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 文化祭は二日間の日程で行われる。今日はまさにその二日目で、ついさっき後夜祭を終えたところだった。  うちわの扇部に友達同士メッセージを書き合うのが、先輩たちが代々続けてきたカルチャーらしい。例に漏れず、彼のうちわにも沢山のメッセージが綴られていた。最早本来の柄が見えなくなるほどだ。 「あー、何か途中から勝手に持ってかれてさー。手元に返ってきた時にはもうこの状態だったんだよね」  これとかヤバくない? と、真ん中にでかでかと描かれた下手くそなウサギの絵を指し、彼が顔をしかめる。  卒業アルバムへのメッセージ等もそうだけれど、こういった時、教室内でのその人の価値というか、格差みたいなものが現れるのだと思う。  いつもクラスの中心にいる人気者はページいっぱいにみんなからメッセージをもらうし、教室の端の方で静かに過ごす者は本当に仲のいい友達くらいとしかそういう交流をしない。  無論、前者が彼で、後者が私だ。 「ていうか、私とこんなところいていいの?」 「何で?」 「いや、友達と打ち上げとか……」  津山くんには、友達が沢山いる。  それは部活の仲間だったり、去年クラスが一緒だった人だったり――友達以上恋人未満な関係の、女の子だったり。 「うーん、別に。クラスの打ち上げもあるし、そこで良くない? ってなった」
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