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すっかり怯えきった瞳が、ようやく私を映す。ひとまず安堵したのか、彼の肩から力が抜けた。それなのに、手は相変わらず繋がったままだ。
「大丈夫? 飲み物買ってこようか?」
「ま――待って」
離そうとした手を、ぎゅ、と捕まえられてしまう。そこでようやく「手を繋いでいる」という事実に恥ずかしくなってきて、余計に離したくなった。
「持ってる。さっき、水買ったから……」
「そっか」
「……だから、その」
行かないで。
消え入りそうな声で、彼が懇願する。不覚にも可愛いと思ってしまった私を、本当に誰か殴って欲しい。
何だこの幼稚園児。何だこの男子高校生。しおらしくなった彼は、とっても心臓に悪い。
「うん、行かないよ。大丈夫」
私が頷くと、津山くんはゆっくりとその場にしゃがみ込んでしまった。立ち上がらせてベンチまで誘導するのも面倒なので、断りを入れてから彼のリュックを開けてペットボトルを取り出す。
顔を上げた彼が手を伸ばしてきたけれど、やんわり押しとどめて、蓋を開けてから手渡した。
「はい、どーぞ」
「……ありがと」
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