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店を出るとすぐに葉山は自分が着ていたコートをマリに掛けて言った。
「それで、そんな格好だったんだ」
マリはベージュの仕立ての良さそうなコートの端をギュ、と掴んで
「お、お恥ずかしい限りです・・・・」
とうつ向きながら歩く。
「いやぁ、最近の日本の流行りかと思ったんだよ、パジャマ風な洋服とかさ」
葉山は笑った。
「いえ、ただのパジャマです・・・・」
マリは自ら穴を掘って入りたい思いだった。
「僕が、君の事をホテル側に伝えてはみるけど、身分を証明する物を何も持ってないとなると、厳しいかもしれないな。バスローブでも着ていたら逆にホテル名が刺繍されていたりして説得力もあったけど、自前のパジャマだもんなぁ」
葉山は困ったような、この状況を逆に楽しんでいるような微妙な表情をした。
「でもまぁ、ホテルに入れなかったとしても、僕のところに来ればいいさ。近くなんだ」
「・・・・・」
「聞いてる?」
「えっ?ご、ごめんなさい。あまりにサラッと自宅に誘われたんで、次のドラマの台詞の練習か何かかと・・・・」
マリは真っ赤になって言った。
「ふぅん・・・」
と葉山はマリの顔を覗き込んだ。
「そう言えば名前まだ聞いてないよ?」
「マリですっ。佐脇マリ」
「マリちゃんね。葉山迅です。あらためて宜しく」
「こ、こちらこそ、宜しくお願いします!」
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