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彼は続ける。
「マリ、結婚とかしたいだろ?だったら相手はオレじゃないと思うんだ」
ガーン。
今どきガーンなんて頭に流れるとは思わなかった。
でも確実に脳内に流れた。ガーン、と。
「け、結婚なんて・・・・」
しなくてもいい、という言葉が出ない。
今、5年間も付き合ってきた日々を思い返す余裕すら、ない。
ただあなたと一緒にいたい。
その一言でこの付き合いは継続するかもしれない。
ただあなたが好きなの、と。
でも、マリには無理だった。
彼との5年間は、確実に結婚に向けての5年間だったのだから。
25歳から30歳という女として人生で最も美しく瑞々しい瞬間を惜し気もなく与えた男なのである。
その見返りが結婚でなく別れだという意味がマリにはよく分からない。
「私を嫌いになったの?どこが悪かったの?」
マリは彼の胸に頬をつけた。
久しぶりの彼のぬくもり。
そういえば、最近彼が忙しくてスキンシップもなかったな・・・・。
振り払われるかと思った。もう別れるんだから離れてくれ、と。
でも彼の行動は意外なものだった。
キスしてきたのだ。
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