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彼は何も変わってなかった。
マリの耳に髪をかける優しい指先も。
吐息まじりに耳たぶを甘噛みする仕草も。
柔らかい唇が、首筋から胸へとキスしてくる。
そのタイミングで彼の左手が太ももに・・・・。
5年も付き合っていると、そういう時の順序さえ予測できてしまうんだ。
次はこうして、次はこうなって、次は・・・・。
悲しい事に全部当たってしまう。
そうだった。
身体の相性だけは良かったんだ、私たち。
だから、5年ももったのかもしれない。
「どうした?」
彼が聞いた。
涙が、止まらない。
「最後だから、抱くの?」
マリの言葉に彼はあからさまに動揺した。
「嫌なら、いいよ別に」
マリは彼から離れた。
「これで終わりなら、同情も綺麗な思い出も私いらないから」
彼は立ち上がり、クローゼットにある自分の服を鞄に詰め始めた。
本当にこれでジ・エンドである。
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