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「それで!?なんでニューヨークなの?」
スマホ越しに聞こえてきた親友の美咲はビックリするほど高い声で言った。
マリは白地に金糸の刺繍が施されたソファにお姫様さながら寄りかかって言った。
「だって苦節5年よ?この5年間の人生が白紙に戻ったのよ?歳は二度と戻らないのに!!ニューヨークにでも来て贅沢三昧でもしなきゃ、やってらんないわよ!!」
テーブルの上にワイングラスが散乱している。ホテルに到着するや否や超高級ワインをセレクトした。
「それで?そんな良いホテルにいて1度も外に出てないの?」
美咲が馬鹿にしたように笑う。
マリはムッとして
「今に出るわよ!ワイン開けちゃったから勿体なくて無理して飲んでるのよ!これ全部飲んだら遊びに出るわよ!!」
「大丈夫なの?そこ、日本じゃないんだよ?酔っぱらって徘徊なんて暴漢に襲われるに決まってんじゃん。やめな、マリ。三十路女が1人ニューヨークで酔っぱらって襲われるだなんて事件、みっともなさすぎるわよ!?」
「三十路目前に失恋したのよ。これ以上みっともない事なんてないわよ!!」
マリはワイングラスを持って立ち上がり、ヨタヨタした足取りでバルコニーへ出た。
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